残念ながら「ニセコ」になることはできない

残念ながら、こうしたエリアをはじめ、日本の多くの観光地が、外国人富裕層向けリゾートとして日本唯一の成功事例かつ、世界的なスキーリゾートとなった北海道のニセコのように、ブランド化し持続的に発展することはなさそうだ。その理由としては、①官主導である、②「幕の内弁当型」である、③富裕層を理解していない、④消費主体で「投資」の観点がない、という4点が挙げられる。

①官主導である

日本では、官主導、地元自治体主導の観光策やリゾート計画が目立つ。それらは、卓上のこうあるべき論や、調査、アンケートなどから始まり、さまざまなデメリットやリスクも考えた結果、総花的で「幕の内弁当」のような施策となりがちだ。肝心の需要や「儲けること」が置き去りにされてしまい、一時的には成功しても、長続きせず、失敗するケースがほとんどだ。

官ではなく、民間の日本人、外国人を問わず、リスクを取りながら、自らの資金や資産をかけて、投資し事業する人間の意思に勝るものはない。儲ける、収益の観点に欠ける官主導では、観光によって地域が持続的に潤うことはないのだ。官の役割は、インフラの整備や景観、投資に関わるルールの制定など、交通整理に徹することではないだろうか。

そもそも富裕層、富裕層というが、外国人富裕層を呼び込むこと自体が目的になっていないだろうか。いかに観光を通じて地方を活性化させるか、ということが本来の目的である。であれば、なにも海外の富裕層を呼び込むことにこだわるのではなく、増え続ける日本国内の富裕層であったり、外交官や外資系企業駐在者など、日本に滞在する外国人富裕層をターゲットにするのもありだ。

富裕層は混雑した観光地を好まない

②「幕の内弁当型」である

日本全国のほとんど全ての観光地・リゾート地が、インバウンド需要だけでなく、日本人需要も強化し、富裕層から中間所得者層、ファミリー層からシニア層まであらゆる層が楽しめるリゾートになることを望んでいる。

こうした「幕の内弁当型」の観光地・リゾート地が、国内外の富裕層を惹きつけることはない。子供からシニアまであらゆる年代・所得ステージの人々が訪れるのが理想ではある。しかし、それは富裕層の離反を招く施策だ。彼ら彼女らは混雑を嫌い、誰でも行ける観光地・リゾートを好まない。

例えば、世界的なスキーリゾートとなったニセコは、外資系ラグジュアリーブランドホテル(外資系最高級ホテル)が立ち並び、富裕層以外にとってハードルが高い観光地になってしまった面があるのは確かだ。しかし、「選択と集中」「売上より利益」というビジネス観点からも、外国人富裕層を対象とした高級化路線を継続するのが得策だ。

ニセコ
写真=iStock.com/SEASTOCK
※写真はイメージです

誰でも行けるニセコにするのか、特別な日に行くニセコにするのか。前者になれば富裕層は逃げてしまう。「次なるニセコ」をみつけようとするだろう。

いずれにせよ、富裕層が集まる観光地には、富裕層でないマスリテール層も集まってくる。逆に、マスリテール層がメインの観光地に、富裕層が集まることはない。