そのために、カギとなるのが「身体感覚」。ドーパミンには行動を制御する「コントロール回路」があります。これは、記憶されている身体感覚を振り返ったときに発動します。

それを活用して、リアルで具体的な身体感覚としてイヤな行動をイメージすると、脳が勝手にそれを避けるようになるのです。

たとえば前述の男性の場合、欲望に負けて「アニメを見続けた結果、どうなったか」を次のように振り返ってもらいました。

・睡眠時間が削られ、寝不足になる。そのあと3日くらい生活リズムが乱れる
・一時的にはストレスが解消するけど、結局後悔するし、見てしまったこと自体もストレスになる

過去に味わった不快な感覚が有効

ここでさらに、「ストレスとは具体的にどんな状態か」を言語化してもらいます。

・息が詰まるような、肩に重くのしかかるような感じ

このように分析してもらった結果、2週間後に男性は自然と深夜のアニメをやめられるようになり、睡眠不足も解消できたようです。あれほど深刻に悩んでいたのに、「そんなことありましたっけ」というくらい、淡々としていたのをよく覚えています。

目の前の欲求にふりまわされて「また同じ過ちを犯しそうだな」と思ったら、「過去に味わった不快な身体感覚」をできるだけ細かく思い出してみてください。

・誰かに迷惑をかけて、胸がキュッと締め付けられるような思いをした。
・先延ばしをしてしまい、急いで作業した結果、頭痛と肩こりがひどく悪化した。
・寝不足で仕事をしたらあり得ないミスをしてしまい、ショックで食べ物がのどを通らなくなった。

そうした不快な身体感覚を振り返ることで、自然に欲求と距離を置くことができます。さらに、ドーパミンは増えたきっかけとなった行動を強化するため、上手くいった行動をまた繰り返すようになります。

まるで以前からそうしていたかのように、その行動は自動化されていくのです。

このように、脳の特性をいかせれば、頑張らなくても脳が適切な選択をしてくれるので、自然と要領よく仕事をこなせるようになります。

ポジティブな感情、ネガティブな感情は仕事の邪魔になる

さらに、脳の特性を自然と発揮しやすくするコツがあります。

それは、「リラックスすること」。

イメージ的には、強い思いや気合いがあったほうが、脳が目覚めて活発に動く感じがするかもしれません。ですが、実はこれ、脳にストレスがかかっている状態です。

脳の活性度合いを「覚醒水準」と呼ぶのですが、アーチェリーや射撃、ゴルフなどの研究結果から、覚醒水準が適度に低いほどリラックスして、よいパフォーマンスが発揮できることが、明らかになっています。