ユニクロと無印良品はほぼ同時期に中国に進出したが、ユニクロは絶好調であるのに対し、無印良品は伸び悩んでいる。ITジャーナリストの牧野武文さんは「ユニクロには目立つ競合がないが、無印良品にはメイソウというライバル企業が出現した。中国らしいパクリ企業として当初はバカにされていたが、いまでは店舗数も売上高も無印良品を追い抜いている」という――。

なぜユニクロと無印良品は中国で人気なのか

中国の若い世代に人気のある日本ブランドと言えば、ユニクロと無印良品だ。

中国人の多くは日本ブランドに対し、簡素、自由、快適、健康といったイメージを持っている。このような要素は「日系元素」と呼ばれ、特に若い世代を語る上で欠かせないワードとなっている。

中国の経済に大きな影響を与える若い都市生活者ほど「日系元素」を好む傾向にある。彼らは、環境保全や社会問題に対する関心が強く、大量消費を嫌い、シンプルな生活を望んでいる。そうした上質なライフスタイルと両ブランドが持つイメージがシンクロしているのだ。

例えば、中国のフリマサービスでは、無印良品の紙製のショッピングバッグがよく取引されている。知人に贈り物をするときに、無印良品のバッグに入れて渡すと、センスのいい人と見てもらえるからだ。

日系元素の象徴といえる両ブランドは、中国の都市部を中心に店舗を拡大しており、根強い人気があるのは確かだ。だが、近年の売り上げは対照的といえる。いったい何があったのか。それぞれ見ていきたい。

日本の営業収入に迫るほど絶好調のユニクロ

ユニクロは中国市場で最も成功した日本企業と言っても過言ではない。中国に897店舗(2022年末)を展開し、5385億円の売上収益(含む香港、台湾)がある。日本の売上収益8102億円に迫ろうとしている。

中国に進出したのは2002年。当初は、中国市場専用の低価格製品が不振で苦戦を強いられた。だが、日本と共通の商品を投入したことや、2010年に上海市で最も人通りの多い南京西路に旗艦店を出店したことが起爆剤となり、売り上げは2020年のコロナ禍の影響を除いて、順調に成長をしている。

【図表1】ユニクロの中国事業(香港、台湾を含む)営業収入
ユニクロの中国事業(香港、台湾を含む)は、2020年のコロナ禍を除いて、順調に推移をしている。ファーストリテイリング「アニュアルレポート」より筆者作成

ユニクロの製品は、日本よりも価格が高く設定されており、中国人の所得から見ると安くはない。しかし、品質が優れていることから、中国人にとって上質のカジュアルとして認識されている。

人気の理由は、商品が日系元素を体現していることだ。例えば、ヒートテックやUVカットなどの機能性衣料は「快適」を、着る人を選ばないデザインは「自由」を。これまでの海外ブランドにはなかった魅力になっている。

【図表2】ユニクロの中国店舗数の推移
ユニクロの中国店舗数の推移。2008年以降は順調に店舗数を伸ばしている。柳井正社長は目標として3000店舗という数を語っている。ファーストリテイリング「アニュアルレポート」より筆者作成