ここ10年ほど、関西のお笑い芸人などの影響で妻を嫁と呼ぶ“文化”が広まりつつある。一方で、嫁と呼ぶことに対して不寛容な人も増えている。第三者への伴侶の適切な呼び方を考察したコラムニストの石原壮一郎さんは「誰もが自分の好みで自由に呼び方を選んで、ごちゃごちゃ言わずに他人の選択を尊重する。それが多様性を認め合う社会です」という――。

※本稿は、石原壮一郎『失礼な一言』(新潮新書)の一部を再編集したものです。

吹き出しに「これウチの嫁です」というセリフ
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「嫁」をイビリたい人たち

「週末は嫁の実家に行っていた」

何気なく発したこのセリフが、あなたの人格的な評価を大きく下げることになるかもしれません。

「あっ、これウチの嫁です」

夫婦で買物をしていたら、知り合いにバッタリ。妻を紹介したこのセリフが、夫婦のあいだに修復不可能な亀裂を作るかもしれません。

ここ数年、男性が自分の配偶者を「嫁」と呼ぶことに対して、不寛容な人が増えています。そういう人は誰かが「嫁」を使っているのを見ると、「ケシカラン!」「目覚めよ!」と詰め寄らずにはいられません。

数年前、ある企業のツイッター公式アカウントが〈嫁から「とりあえずこれを読め」と~〉と書いて、炎上しました。後日、「不適切な表現」だったとお詫びする羽目になります。ダジャレが言いたかっただけかもしれないのに……。

俳優の松山ケンイチさんがあるテレビ番組で、妻で女優の小雪さんを「嫁」と言ったところ、SNS上で激しいバッシングが沸き起こったこともありました。それ以後、松山さんは小雪さんについて語るときは、「妻」を使っています。

「嫁呼び」を批判する人は、当人がどういう意図で「嫁」を使ったかや、地域によってのニュアンスの違いなどは、まったくおかまいなしです。言われた当人の気持ちも関係ありません。聞きかじった理由をくっつけ、執拗しつように「嫁」という呼び方を非難します。

ある意味「嫁呼びイビリ」と言っていいでしょう。