肝心なのは「どう見られたいか」

悩ましいのが、よその夫婦の配偶者を呼ぶ場面。「あなたの夫」「キミの妻」は堅苦しいし、ぞんざいに響きそうです。いちおう敬意も示せて無難なのは、やはり「ご主人」「奥さん」でしょうか。

しかし、相手は配偶者をそう呼んでほしくないかもしれません。やや遠い関係の相手なら、意に沿わなかったとしても相手はスルーしてくれるでしょう。気をつかったつもりで、目上の人に「お連れ合い」や、近頃台頭している「夫さん」「妻さん」を使うのは、いささか無謀です。

友達や同僚の場合、いちいち引っ掛かりを感じさせる失礼は避けたいところ。下の名前をさん付けで呼ぶのはひとつの方法ですが、それだと馴れ馴れしすぎる気がしたら、

石原壮一郎『失礼な一言』(新潮新書)
石原壮一郎『失礼な一言』(新潮新書)

「えっと、キミの奥さん……というかパートナーは」

そんな感じで呼び方を模索している様子を見せて、相手の反応を窺うといいかも。

「夫の人」「妻の人」という呼び方も、一部で重宝されています。相手が配偶者をどう呼んでいるかも、どの呼び方が適切かを探るヒントになるでしょう。

どんな言葉を使うかは、一種の自己主張という面もあります。「偏見に基づいたレッテル貼り」には気をつけたいところですが、言葉ごとにイメージが伴うのは避けられない宿命。妻を「ワイフ」と呼ぶ人が、一定の確率で「気取ったヤツだな」と思われるのは仕方ありません。

「嫁」にせよ「連れ合い」にせよ、使う側には「こう見られたい」というイメージがあります。そしてイメージは、時代によって変化します。誰もが自分の好みで自由に呼び方を選んで、ごちゃごちゃ言わずに他人の選択を尊重する。それが「多様性を認め合う社会」ってヤツです。

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