「時間術で効率化をがんばっても、自分の時間は増えないまま」「生産性向上のためだというけど、なぜか仕事が増えている」「頑張れば頑張るほど、ツラくなる」――なぜ私たちは時間と戦ってしまうのか。自分の時間を取り戻すための思考法を、著書『人新世の「資本論」』(集英社新書)などで知らせる東京大学の経済学者・斎藤幸平さんに伺った。5月26日(金)発売の「プレジデント」(2023年6月16日号)の特集「毎日が楽しくなる時間術」より、記事の一部をお届けします――。
ビーチで刻む懐中時計
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週15時間労働で済むはずだったのに

今から約100年前、イギリスの経済学者ジョン・メイナード・ケインズは「2030年には、技術の進歩によって生産性が向上し、人々は週15時間程度の労働をすれば済むようになるだろう」という未来を予測しました。

経済学者 ジョン・メイナード・ケインズ
経済学者 ジョン・メイナード・ケインズ「2030年には、技術の進歩によって人々は週15時間程度の労働で済むようになるだろう」

ケインズが見た未来まで7年と迫った2023年の今日、技術は遥かに進み生産性も格段に向上しましたが、人々は長時間労働に疲れ、時間に追われる日々を過ごしています。しかも、その長時間労働が豊かな生活をもたらしてくれる実感がまったくありません。

それどころか、経済活動に寄与するほど地球環境を破壊しているのではないかという、絶望的な現実に直面しています。これは、近代の巨大な「パラドックス(逆説)」です。

資本主義が抱えるこうした矛盾に気づいた人たちが、増えてきた実感があります。『人新世の「資本論」』(斎藤幸平著、集英社新書)や『限りある時間の使い方』(オリバー・バークマン著、高橋璃子訳、かんき出版)といった、資本主義や効率主義を真っ向から批判する本が異例のベストセラーになっているのも、そうした証左だと思います。

5月26日(金)発売「プレジデント」(2023年6月16日号)の特集「毎日が楽しくなる時間術」では、本稿のほか、「自分の時間を取り戻そう」をテーマに取り上げています。「自分の時間を増やしたい」と願うすべての方に向けて、まったく新しい時間術を満載しています。