お勧めしているのは「友達をつくる」こと

豊かな時間、実りある人生を過ごすために、私たちができることは何か? 私がお勧めしているのは「友達をつくる」ことです。それも確実性やコスパとは無関係の友達が理想です。偶発的な出会いがあれば、さらに良いです。

自省を込めて言えば、私は余暇ができるとすぐ「原稿が書ける」などと考えてしまいます。資本主義の加速から逃れられていないのです。酒を飲む相手は、昔からの友人が多い。無意識ながら、気心の知れた仲間内で飲むほうが、失敗が少ないと思っているのでしょう。リスクヘッジしやすいのです。

せっかくの休日に残念な思いをしたくないと思うと、どうしても保守的な過ごし方になってしまいます。ですが、何かにつけてコスパ/タイパ(費用対効果/時間対効果)で考えるのは、非常によくない習慣です。人生なんてコスパの悪いことばかり。恋愛、結婚、子育て、人づきあい――どれも失敗がつきもので、コントロールが利きません。

しかし、人生の喜びは偶然がもたらす、思い通りにはいかない、面倒な関係性の中から得られるものではないでしょうか。確実性とコスパから離れた人間性を築いていくと、価値観も変わっていくかもしれません。

そう思って最近、東京・高尾山の土地を1口20万円で購入するプロジェクトを始めました。高尾山の自然を守り、後世に残していこうという主旨に賛同した見ず知らずの40人が集まり、仲間を増やそうという試みです。すでに出資したメンバーが集まり、現地視察を兼ねて山登りをしたのですが……。

いざ自分たちが所有する土地を見ると「ロッジを建てて貸したらどうか」「歩道を設けてイベントを開こう」など、投資家目線の意見がポロポロと出るのです。資本主義のマインドから脱却するのは、かくも難しいことなのだとあらためて思い知りましたが、同じ考えを持ったメンバーで集まれることはプライスレスだと実感しています。

(構成=渡辺一朗 撮影=宇佐美雅浩 図版作成=大橋昭一)
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