社会保障と税の一体改革関連法案が衆院を通過した(※雑誌掲載当時)。無論、それで将来への不安が払拭されるわけではない。本書によれば、標準的な夫婦が月30万円で暮らす場合、公的年金だけでは2500万円足りなくなるという。

では、そのお金をどう調達してくればよいのだろうか。著者は2500万円の算出根拠を示したうえで、生命保険とマイホームの2つの非稼働資産を現金化することを提案している。日本政府および金融機関は、こうした潜在的な需要に積極的に応えるべく、法制度の整備と金融技術の開発に注力すべきだ、というのだ。

資産の活用というと、「貯蓄から投資へ」という話に傾きがちだが、著者はこれには否定的だ。人口動態などから考えて、株価が右肩上がりになる可能性は低く、「取ってよいリスクは預金額の1~2%」と言う。随分と少ないように思えるが、低金利を余儀なくされている現在の環境においては、投資もまた厳しいと著者は言う。

そこで出てくるのが、生命保険とマイホームの現金化だ。

ここでは、マイホーム活用の手法のみ簡単に紹介しておく。マイホームに住み続ける場合は、自宅を担保に資金を調達する方法(リバースモーゲージ)が考えられるが、地価の下落傾向が続く日本では限界がある。

それならば、とマイホームを売却しようとしても、中古住宅市場には問題が多くこれも難しい。貸し出す場合も問題はある。が、ここで著者が利用を勧めるのが「公的移住・住みかえ支援制度」(2006年導入)だ。

著者自身の発案によるという同制度は、原則50歳以上の人が日本国内に保有している自宅を公的機関が借り上げ、空き家になっても家賃を支払うものだ。

この制度を使った“金融マジック”が興味深い。例えば、引退して通勤の必要がなくなった世帯が、都心部に1時間程度でアクセスできる“遠郊外”に移り住むことを考えたとする。その際、都心部と遠郊外の間に、急激に地価が下がる“断層”があることを利用するのだ。

この価格の“断層”の存在は、経済的合理性だけでは説明が難しいのだが、公示地価を調べれば確認できる。都心部のマイホームを一般社団法人の移住・住みかえ支援機構(JTI)に借り上げてもらい、住み替え先の購入代金はそこから得る家賃収入で回収。おおむね5年とされる回収期間を過ぎれば、家賃は「住宅年金」として確保できる。要するに、「住み替えをすることでお金を得て、人生を豊かにする制度」ということだ。

政府に期待するのではなく、「貯蓄から投資」に財産をシフトして相場に賭けるのでもない。この利ザヤ取りによって、老後資金の不足分を調達しましょう、というのが本書の主張である。リタイア後を見据える40代後半以降の方々が、一度手に取る価値のある一冊だと思う。