うれしいことでも「コストが大きい」としんどくなる

「またやりたくなる」の「また」の部分は、「コスト<うれしい気持ち」がないとしんどいです。

家族のために「“また”料理をつくりたい」と思うのはどんなときか。

食材が集めやすく、調理が簡単で短時間、家族から「おいしい!」と言われる、こんなサイクルです。

「あの店にしか売ってない食材」「手間も時間もかかる料理」「食べ終わった家族からなにも言われない」がそろった環境で「また」やりたくなる人なんて、採用面接に向かう途中で助けたおじいちゃんが面接先の会長だったくらいのレア度です。

発達につまずきのある子どもたちに、なにかに取り組んでもらうときもおなじような考え方で接します。

彼らにとって「コスト<うれしい気持ち」になっているかどうか。ここを考えながら課題をつくったり、声かけをしたりしていきます。

退屈な勉強にうんざりした疲れた生徒と学校の宿題が山積みに
写真=iStock.com/artplus

やりたくなるサイクルづくりのための「2つの工夫」

そのためには、つぎの2つの工夫をしていかなければなりません。

①コストを減らす工夫

子どもたちにとってちょうどいい負荷になるように、活動の「手間」や「時間」を減らし、なるべく効果の高い課題を考えます。

ただ、その子の特性や性格、環境によって「ねらい」や「目標」は変わるので、それぞれでトライ&エラーを繰り返しながら調整が必要です。

②うれしい気持ちを大きくする工夫

がんばって取り組んだ先、または取り組んでいる最中に「うれしい気持ち」や「達成感」を得られるようにしていきます。

たとえば「なみ縫い」を練習する場合。

このときに

「この授業の終わりまで、2ミリ幅のなみ縫いをして三角形をつくりましょう」

では、子どもにとってむずかしいし、たのしくありません。

では、こうだったらどうでしょう?

「大好きなキャラクターのコースターを、5ミリ幅のなみ縫いでつくりましょう。完成したら持って帰っていいですよ。20分作業したら、5分休憩しましょう」

これなら、作業のしんどさがずいぶん減り、たのしく取り組めます。