双子を連れて外出するのは至難の業

なにせ、双子育児は買い物さえ難しい。双子用ベビーカーには、縦型と横型があるが、横型に乗せるとスーパーの通路を歩くことができないし、縦型に乗せると、通路の角を曲がるとき、曲がった先に何があるのか見ることができない。横型も縦型も、二人を乗せたらカゴを持つことができない。まさか、カゴを載せたカートとベビーカーを同時に押すこともできない(腕が三本あったら可能かもしれないが)。

ダブルベビーカーの双子の赤ちゃん
写真=iStock.com/undefined undefined
※写真はイメージです

横型も縦型も、危なくてエレベーターを使うことはできなかった。横型だと、エレベーターに入る瞬間に必ずどこかがドアに引っかかるし、縦型の場合、入っていく最中にドアが閉まるのではという恐怖が先立って挑戦したこともない。それに、何人も乗っているエレベーターに、双子用の大きなベビーカーとともに乗り込むのは気が引けた。周りの視線が怖かった。

たとえば近所の公園に行ったとしても、二人を同時に遊ばせるのは至難の業だ。一人が右に行けば、もう一人は必ず左に行くのが双子というもの。睡眠不足の状態では公園に行くのでさえ、気が重い。重いのは気持ちだけじゃなくて、どんどん成長する双子は実際に重かった。双子の移動には、大人が二人は必要なのだ。そういう理由もあって、昼間、私は引っ越したばかりの家のなかで、双子につきっきりの日々を過ごしていた。そして、今か今かと夫の帰りを待っていたというわけだ。

夫はおむつを替え、ミルクを作ってくれたが…

引っ越したばかりの田舎町で、相談相手も多くはなかった。乳児検診で出会ったお母さんたちと話すことはあったけれど、双子の成長について保健師さんに何を言われるのかと不安で、会話の内容なんて記憶に残らなかった。ああ、なんて恐ろしいことだ……。

私の夫は確かにイクメンというタイプではないけれど、それでも育児の手助けはしてくれた。頼まずとも、おむつを替え、ミルクを作り、私が双子のどちらかにかかりきりになっていると、残りの一人の面倒を見てくれた。その点はとてもよい父親だった。

しかし、一点だけ彼に難癖をつけるとしたら、彼のなかには、「育児は母親がすべてやるべきもの」という考えが根強くあったことだ。