たまらず低圧電力の料金引き上げも決定

足許、米国の利上げペースの鈍化などを背景にドル/円の為替レートは130円台前半まで水準を戻しているが、前年同月と比較すると依然として円安水準にある。1月の貿易統計(速報)によると、液化天然ガスをはじめ鉱物性燃料の輸入価格は前年同月比48.4%上昇した。その状況下、東電は財務内容のさらなる悪化などを防ぐために緊急融資を受ける。

2022年度通期、東京電力は最終損益が3170億円の赤字になると予想している。発電源構成比の違いはあるものの、他の電力会社でも燃料価格の高騰などによってコストが急増し、業績が悪化するケースは多い。東京電力は収益を確保するために、低圧電力の料金の引き上げを申請した。多くの家庭が契約する電力料金(規制料金)では、1キロワットアワー当たりの値上げ金額は平均で9.16円(うち7.15円は燃料費調整が上限に達した影響)になる見通しだ。

値上げラッシュはまだ続きそうだ

収益を確保するために、電力以外の分野でもより多くの企業が、これまで以上に価格転嫁を強化せざるを得なくなっている。象徴的なデータとして、2023年1月31日に帝国データバンクが発表した調査結果によると、わが国の食品主要企業のうち195社は、4月までに1万を超える品目の値上げを実施する。過去のコスト上昇分を依然として販売価格に転嫁できていない企業も多い。物価上昇を追いかけるように、値上げに踏み切る企業は増えている。

値上げラッシュはまだ続きそうだ。原材料の市況に目を向けると、例えば小麦の先物価格は2020年の中ごろから緩やかに上昇した。その中でウクライナ紛争が発生すると、穀物供給の減少懸念の急上昇などによって価格は一時急騰した。2022年の半ば以降、価格は幾分か下落したが、足許の小麦価格は2020年末よりも2割ほど高い。

異常気象の深刻化による穀物の生育不良、中国による食料備蓄なども価格上昇の主たる要因と考えられる。その状況下、国内の需要が停滞し、金融緩和が続いてきたわが国の企業は海外企業に買い負ける状況が増えているとみられる。それは小麦をはじめとする穀物に限らず、魚介類や肉類、鉱物資源などにも当てはまるだろう。