政府は9カ月間の負担軽減策を始めたが…

東京電力は、政府系金融機関や大手銀行などから総額4000億円程度の緊急融資を受けるという。世界的なエネルギー資源価格の上昇と円安の影響によってコストは急増し、同社の最終損益は赤字に陥った。資金繰りの改善に向け、東京電力は値上げも実施する。

決算発表記者会見に臨む東京電力ホールディングスの山口裕之副社長(右)=2023年2月1日日午後、東京都千代田区
写真=時事通信フォト
決算発表記者会見に臨む東京電力ホールディングスの山口裕之副社長(右)=2023年2月1日日午後、東京都千代田区

一方、1月から9月まで、政府は電気料金などの負担軽減策を実施する。8月まで家庭向け電力料金は1キロワットアワー当たり7円引き下げられる(9月の支援額は半減)。標準世帯では、ひと月あたり約2800円の負担軽減になる見込みだ。都市ガスなどの負担軽減策も実施される。資源エネルギー庁によると、標準世帯の場合、総額4万5000円程度のエネルギー負担軽減効果があるとされる。

ただ、軽減措置が実施されている間に、世界全体で資源などの価格が大きく下がるか否か、不確実性は高い。足許の中国経済の回復期待の高まりなどを考慮すると、短期的にわが国の物価はまだ上昇しそうだ。その場合、仮に軽減策が予定通りに終了すると、家庭の電力料金負担は3割程度上昇するとみられる。食品の値上げラッシュなどもあり、生活の苦しさの高まりに直面する家計は増えそうだ。

6509億円という巨額の赤字を出した理由

2月1日に東京電力が発表した2022年度第3四半期決算の説明資料によると、2022年4~12月の最終損益は6509億円の赤字に転落した。前年同期の最終損益は98億円の黒字だった。急速な赤字転落は財務内容にも負の影響をあたえている。2022年3月末に24.9%だった自己資本比率は、12月末に20.4%まで低下した。

主たる要因として、燃料価格の高騰は大きい。大手電力の中で、東京電力の火力発電への依存度は高い。2023年から2025年にかけて同社の電源構成は液化天然ガスが45%、石炭が30%を占める見通しだ。コロナ禍やウクライナ紛争などさまざまな問題が重なった結果、世界的に供給体制は不安定化し天然ガスや石炭などの価格は一時大きく上昇した。

加えて、2021年1月以降、外国為替市場では主要通貨に対する円安のトレンドが鮮明になった。2021年の年明けに103円台だったドル/円の為替レートは、日米の金融政策の方向性の違いなどを背景に2022年1月はじめに115円台にまで下落(円安が進行)し、10月中旬には一時151円90銭台まで急激な円安が進んだ。