小学校時点での差なんて、気にしなくていい理由

実際、多くの保護者からよく聞くのが「スクールにはイヤがらず通っているけど、家では何もしない」というものです。これは、子どもながらに「習い事はしないといけないから英会話には通っているけど、実は心から楽しんでいるわけではない」のではないでしょうか。

ちなみに、ひと昔前の中学1年生には次のようなことがよくありました。中1の夏休み前後では「英語が一番好き」という中学生が多いのですが、よくよくその理由を聞いてみると、「数学とか他の科目よりもついていけるから」とか「ゲームが多いから」といった理由が少なくなかったのです。そして、中1の終わりに再び好きな科目を聞くと、英語の割合は激減しているのです。

本稿をお読みいただいたみなさんには、世間の「英語は早く始めるほどいい」というのは「必ずしもそうとは限らず、リスクのほうが大きい」ということが十分に伝わったかと思います。

とは言え、他の子が「英検に合格した」などと聞くと、「小学校で大きく差がつくから早く始めないと」とか「どんどん差をつけられている」と焦ってしまう方も多いでしょうから、ここでは「格差をどう埋めるか?」と悩んでいる方に、「気にする必要は一切ない」という理由をお話しします。

早いうちから無理をさせてもメリットは少ない

まず1つめは、「そもそも早く始めたところで早くやめてしまったら(挫折してしまったら)、それこそ大きな痛手となる」ということです。なぜかこのたった一言が世間では言われませんよね。焦って始めるよりも、「英語を続けるための準備」に時間を割いてからでも遅くありません。

関正生『子どものサバイバル英語勉強術』(NHK出版新書)
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2つめは、「早いほうが吸収が良い」と思いがちですが、それはあくまで「興味を持った場合だけ」です。興味がない3歳児や5歳児より、興味を持った10歳児のほうが吸収は早いですし、興味を持ったのが16歳であっても、そのときは逆に日本語力を駆使してどんどん吸収していくものです。

お子さんのポテンシャルを信じるのは素晴らしいことですが、「早い段階で興味を持って順調に進み、その後何年も英語に取り組み続ける」というのは、かなりレアな成功例と思ったほうがいいでしょう。

3つめは、早期英語教育においては丸暗記式の英語を教えられることになるわけですが、丸暗記はいつか限界がくるので、その程度の暗記量は後でいくらでも逆転が可能だということです。言ってみれば「貯金」みたいなもので、子どものときにコツコツと10円玉を貯金したり、お年玉を貯金すること自体は素晴らしいですが、金額という意味ではたいした額になりませんよね。何年もがんばって10万円とかでしょう。

それよりは、子ども時代に有効にお金を使って色々なことを吸収しておけば、大人になって仕事のスキルも上がり、1カ月で10万円を貯金できる、そんな感じです。

もちろん貯金はたとえです。僕が言いたいのは、丸暗記英語は「あれこれ節約して我慢して10円を貯金するくらい費用対効果が悪い」ということです。

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