なぜラッシュ時間帯の本数を減らすのか

首都圏の通勤需要は減っており、混雑率はかなり緩和されてきている。それに伴って、JR東日本の2022年3月のダイヤ改正では、朝の通勤時間帯の減便を行っている(図表2参照)。そもそもコロナ禍前からJR東日本は「オフピーク通勤」を呼び掛けており、JREポイントを還元するサービスまで行っている。

鉄道ビジネス研究会『ダイヤ改正から読み解く鉄道会社の苦悩』(ワニブックスPLUS新書)
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大量に乗客が乗るラッシュアワーは鉄道会社の“かき入れ時”ではあるが、その乗客の多さは100%ウェルカムなものではないわけだ。

2011年時点で、JR東日本内で最も混雑していた区間は上野→御徒町間。そこを走る山手線、京浜東北線はどちらも200%超えの乗車率であった。その解消を目的のひとつとしたのが、2015年に開通した上野東京ラインである。

同線によって、宇都宮線、高崎線、常磐線と東海道線の直通運転が可能となり、上野乗り換えで東京駅や品川駅に向かう客を乗せずにすむ山手線や京浜東北線の混雑率は解消された。また、宇都宮線などから1本で東京駅に行けるようになり利便性向上に一役買っている。

通勤ラッシュのギリギリ運行から解放される

ただし、この上野東京ラインを実現するために必要とした工事区間3.6kmのために、400億円もの事業費がかかっている。それほどまでに国土交通省の「混雑を緩和せよ」という命令は都内の鉄道会社にとって“無茶ぶり”なのだが、それがコロナ禍で解消され、3分に1本というギリギリの運行をしていた時間帯に1~3本減らせたというのは、鉄道会社からすればコスト面でプラスに作用するだろう。

朝の通勤ラッシュで定刻どおりに運行するのはほぼ不可能であり、ダイヤが回復するのに午前10時くらいまでかかる。そうした副作用を軽減できるのであれば、“かき入れ時”よりコスト削減に結びつく減便なのだろう。ただ、あまり減らし過ぎると混雑率が上がるので、その頃合いをみたダイヤ改正と考えられる。

このダイヤ改正では「着席サービスの向上」として、都内に乗り入れる2本の特急を新たに運転開始している(図表3参照)。文字通り、ゆったりと座って特急で通勤できるようにという意図での運転開始で、ラッシュ時の通勤を“押し込める”スタイルから“より快適に”という方向で利益を得ようとする方針のようだ。

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