利用客の減少を受けて、減便に踏み切る鉄道会社が相次いでいる。なぜそうした「ダイヤ改悪」が行われるのか。鉄道ビジネス研究会『ダイヤ改正から読み解く鉄道会社の苦悩』(ワニブックスPLUS新書)より、一部を紹介する――。(第2回/全2回)
山手線
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ダイヤは鉄道会社のとっておきの“商品”

コロナ禍の影響を受けて、鉄道会社は一部ダイヤを改正している。

鉄道業界でいうところの「ダイヤ」とは、ダイアグラムの略称で各駅を何時に発車し、何時に到着するのか、その列車運行計画を示した図表のことである。日本でダイヤ改正といった場合、列車の発車・到着時刻の変更を指す(実際にダイアグラムも改正されることになるが)。

ダイヤ=時刻表と認識されているわけだが、このダイヤこそ、鉄道会社の“商品”である。同じ路線であっても、運行される鉄道車両の形式などが異なることがあるが、基本的にわざわざ特定の車両を選んで乗車したりはしない。「何時に発車(到着)するか」を確認し、選んで乗車している。

クルーズトレインなど車両に乗ること自体を目的とした列車も登場しているし、車体にデザインをほどこしたラッピング車両も多くの路線で走っている。それでも安心安全な大量輸送を使命とする鉄道会社にとっては、「どの時間帯に何本、どこまで走らせるか」こそが――つまり、それを示したダイヤこそが、企業として提供する最大のサービスとなる。

そして、そのダイヤは鉄道会社の売上、コストと直結する。公共交通機関といえど、乗客の利便性のみを考慮してダイヤを決めることはできない。

本数を増やすには「1両あたり1億円」が必要

本数を多く走らせようとすると、その分の車両がいるが、1両あたり1億円前後が必要となり、8両編成だと8億円必要だ。特に地方鉄道にとっては、すぐに導入できる金額ではない。「重量半分・価格半分・寿命半分」という目標のもとにつくられ、首都圏の通勤車両として1990年代に多数導入された209系が1両9000万円であった。

当車両は、今でも千葉県南部の一部路線で現役として走っている。また、山手線などを走る最新車両E235系は最新のシステムを導入していることから1両あたり1億5000万円ほどといわれている。