持病を逆手に睡眠薬を入手

就職活動について聞くと、学校の成績は全体的によく、出席率も高く、真面目で地味な外見をしているので就職活動は順調だったという。

「でも、絶対に営業の仕事はダメだと思って、営業をしなくてもいいという介護サービス運営会社に入りました。それが企画職で入ったのに、営業だったんです。セールストークもできないし、上司にいじられたり怒られたりするのが不安で、毎日、5~10錠程度の睡眠薬を飲んでから寝ていました」

一般的に睡眠薬は、「ノックダウン型」と「非ノックダウン型」に分かれている。前者の中でもバルビツール酸系の薬は服用するとすぐに眠ってしまうことから、自死やレイプなどに使われることが危険視されて、今はほとんど処方されない。

「私が飲んでいたのは、『鬱っぽくて眠れない』と言うと処方してもらえるベンゾジアゼピン系(非ベンゾジアゼピン系)と言われるノックダウン系の睡眠薬でした」

日本では一般的だが、欧米では依存性が問題視されている。抗不安薬として処方されており、脳の活動を鎮静化させて、睡眠に導いていくとされる。しかし作用時間が短く、依存性が高いことも特徴のひとつだという。

「だんだん効きにくくなっていく。そこで、持病の子宮内膜症を診てもらいに、婦人科に行ったとき『痛みと不安で眠れない』と言って、結構強めの薬を出してもらっていました」

このように、持病を逆手にとり、睡眠薬が専門外の医師の診察を受け、薬を『もらい溜め』する人は少なくない。

美奈絵さんは「繁盛しているクリニックに行くのがコツです。流れ作業で診察して処方してもらえますから」と言った。

初めての恋愛

入社から1年が経過し、恋人もできた。美奈絵さんにとって初めての彼だ。この男性と交際していた23歳から25歳までの2年間は、薬がなくても眠れるようになっていたという。

「どんなときも私の味方をしてくれる10歳年上の男性でした。でも25歳のときに、彼が結婚していると知り、別れたのです」

彼は隠れ既婚者だった。結婚歴がある人は、コミュニケーション能力が高い。恋愛経験が少ない男性と比べると、その力は圧倒的だ。結婚しようと思っていただけに、かなりのショックだったという。

「彼が結婚したのは、私との交際中なんです。私のほうが先に付き合っていたのに、後から来た人と結婚した。理由は私が人生を人任せにしているから嫌だと」

そこで美奈絵さんは死を意識する。別れた後も、彼のことを想像して泣いていた。仕事でも失敗が重なり、眠れなくなった。

「あのとき、こうしていれば……」「もし結婚できていたら……」と思うと、さらに眠れなくなった。ただ薬を飲むだけでなく、ストロング系と呼ばれるアルコール飲料と併用するようになっていた。