共働き家族に対応しない税・社会保険制度

日本の家族は、自営業からサラリーマン化、三世代から核家族化などを経て、専業主婦から共働き世帯への変化が急速に進んでいる。それにもかかわらず、所得税の配偶者控除や社会保険の被扶養者制度、さらにこれらに連動した企業の配偶者手当など、過去の専業主婦が大多数を占めていた時代の仕組みが一向に改革されない。

【図表3】我が国の総人口及び人口構造の推移と見通し

これには、とくに若年層で多い共働き家族に対応した社会制度の改革が、いぜん専業主婦が中心の中高年齢層にとって不利になるとの世代間の利害対立が大きいという面もある。

しかし、専業主婦を優遇する制度は、一定以上の所得を稼ぐとその恩恵がなくなることで、女性の就業を抑制することにもなる。今後の労働力が不足する社会で、この「女性が働くと損をする」仕組みを、政府自体が維持していることの矛盾を、速やかに撤廃する必要がある。

子どもを増やすためには育児に専念する母親が必要との声もあるが、2022年の厚生労働省「出生動向基本調査」での平均子供数は、無職の女性の1.64人に対して自営業以外で働いている女性平均は1.68人と大差はない。

今後の家族政策では、配偶者控除を子ども控除に振り替えるとともに、共働き家族の家事外注コストの高さに配慮した「共働き控除」を設けることで、働く女性に有利な税制改革も検討するべきだ。