これからの時代に大事なのは“ソーシャルインパクト”

地球が数億年かけて蓄えた石油などの化石エネルギーは、人類がより便利で快適な生活を追求したことで大量に消費するようになった。地球は温暖化が進み、各国に気象災害が多発している。その一方、資本主義社会が競争原理を追求し、情報化が急激に進化したことで、SNSなどでは格差社会の不平・不満が充満している。鋭い経営者たちは社会全体にバグやエラーが起こり始めていることを感じ取っている。

長坂真護『サステナブル・キャピタリズム』(日経BP)
長坂真護『サステナブル・キャピタリズム』(日経BP)

だからこそ今、企業に求められるのはサステナブル・キャピタリズム尊重の姿勢ではないか。文化、経済、環境の3つをバランスよく回せばソーシャルクレジット(社会的信用)が生まれ、企業のソーシャルクレジットが高ければ、それがソーシャルインパクト(社会的影響)を醸成する。

僕の収入は、作品の売り上げの5%と決めている。残りはアグボグブロシーの環境、労働問題を解決するための事業に投資している。この数字を生涯変えることはない。その信念がソーシャルクレジットを生み出し、そしてそのソーシャルクレジットは僕の絵の価格を引き上げた。僕の作品だけ扱う専用ギャラリーは国内外で11店舗にまで増えた。香港、ニューヨーク、パリにも開設している。あるギャラリーでは1日に20枚の絵が売れたこともある。今後ギャラリーはさらに増えていく見込みだ。

サステナブル・キャピタリズムの概念を取り入れてからすべてがうまく回り出した。自分のこんな体験から、企業のKPI(重要業績評価指標)は今後、経済的な観点からソーシャルインパクトやソーシャルクレジットに移行するのではないか、と予測する。競争原理に基づく資本主義社会の臨界点が見えた今、経済活動に日々まい進するビジネスパーソン、スタートアップ、起業家、イノベーター、そして会社を運営するビジネスリーダーに、サステナブル・キャピタリズムの重要性をぜひ、知っていただきたい。

(構成=吉井妙子)
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