複製と判断された裁判例

マンガの主人公であるポパイの絵を無断でネクタイの図柄に用いたことが、複製にあたるかが争われた事件があります。元の絵とネクタイの絵にはポパイのポーズに違いがありましたが(図表1)、裁判所は、複製にあたるとしました。

裁判所は、右腕に力こぶを作っているかどうかという程度のポーズの違いは、創作性のある部分に手を加えたことにはならないと判断したわけです。

なお、この事件は、キャラクターそのもの(ある特徴を有しているキャラクターというアイデア)は著作物ではないという判断を裁判所が示したことでも有名です。

【図表1】複製にあたるとされたネクタイに描かれたポパイと元のポパイの絵
出典=『オタク六法

類似性を否定した裁判例

この事件では、幼児向けの教育用ビデオの中に登場する、博士をイメージした人物のキャラクターの絵柄の類似性が問題となりました。両者の博士の見た目は、ぱっと見の印象は瓜二つです(図表2)。しかし、裁判所は類似性を否定しました。

両者に共通している点のうち、①博士を角帽やガウンをまとい髭などを生やしたふっくらとした年配の男性とするという点はアイデアにすぎないうえ、②ほぼ2頭身で、頭部を含む上半身が強調されて、下半身がガウンの裾から見える大きな靴で描かれていること、顔のつくりが下ぶくれの台形状であって、両頬が丸く、中央部に鼻が位置し、そこからカイゼル髭が伸びている……などの具体的表現は、きわめてありふれたもので表現上の創作性があるということはできないとして、両者は①表現でないアイデアあるいは②表現上の創作性が認められない部分において同一性を有するにすぎない(=類似性はない)ものと判断されています。

つまり、これだけ似ているように見えても、創作性のある部分が類似しているとは言えない以上は、類似性が否定されることになるわけです。

【図表2】博士をイメージした人物のキャラクターの類似性が問題となった、原告と被告のイラスト
出典=『オタク六法