趣味の掲示板での出会い

実家では、両親が献身的にサポートしてくれた。当時65歳の母親が食事の支度を、71歳の父親が保育園の送迎を担ってくれたため、西山さんは仕事に専念することができた。

やがて離婚から5年後。西山さんが40代前半の頃に、映画好きが集まるインターネット掲示板で、1つ年下の男性と意気投合。1カ月ほどやり取りをするうちに、車で30分くらいのところに住んでいることがわかると、「会いませんか」という話になる。

カフェで会った男性は、高校を中退してからずっと板前をしているという。離婚歴があり、初婚は22歳、離婚は26歳で、離婚理由は、「元妻が家事をせず働かず、子どもを虐待したから」と話した。なんでも、元妻が家を出る時、男性がためていた貯金750万を持っていってしまったという。子供は娘が2人で、当時22歳、17歳。2人とも男性が引き取り、育てていた。

西山さんが持った男性の第一印象は、「誠実そうな優しい人」。それからも、ひと月に1〜2回ほど会い、3カ月ほど経った頃、男性から交際を申し込まれた。

違和感

交際が始まると、次第に西山さんは、再婚を強く意識するようになっていた。しかし、再婚の話はたびたび出るものの、なかなかまとまらない。気付けば交際を始めてから5年。西山さんは内心、業を煮やしていた。

「(のちに再婚相手となるこの男性は)元妻に以前、お金を持って逃げられたことがトラウマになっていたようで、再婚に慎重でした。どちらかといえば私の方が、『彼みたいに頼れる人を逃してはいけない』と前のめりでした。苗字が変わるタイミングも考えて、私の息子が小学生のうちにと考えて焦っていました」

再婚の話がなかなかまとまらない理由には、この男性が西山さんの何気ない一言に過剰に反応し、すぐに「別れよう」「さようなら」と繰り返すことにあった。例えば、2人でお墓のことを話していたときに、西山さんがふと、「私は散骨でもいいな。誰にも迷惑かけたくないし」と言うと、突然男性は、「お前とは生きていけない。さようなら」と言って帰ってしまおうとする。

また、男性の誕生日には、西山さんは平日で仕事が忙しい中、何とか都合をつけて、レストランを予約、「おめでとう!」と言ってお祝いをした。それなのに、元夫は急に黙り込んでしまう。西山さんは、どうしたのかと思って何度も訊ね、やっと聞き出した答えにあぜん。「“おめでとう”だけで、“お誕生日おめでとう”とは言ってくれなかったね。誕生日が台無しだ。来年の誕生日まで俺はどうやって過ごしたらいいんだ⁉ 別れよう!」と言われたのだ。

赤ワインで乾杯するカップル
写真=iStock.com/Inside Creative House
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男性の物言いはあまりに理不尽だったが、思いを寄せていた西山さんは、慌てて「誕生日おめでとうって言わなくてごめんなさい」と謝り、男性の機嫌を直そうと必死だった。こうしたことが何度かあり、再婚の話がなかなか進まなかったのだ。