国家の“パンとサーカス”にはそれなりの意味がある

いっぽうオリンピックでなにが残ったのでしょうか。

コロナ禍という前例のない状況で、各国の選手団を安全にお迎えし、無観客とはいえ無事に開催できたことは海外の方にも高く評価されました。

スカイツリーには、オリンピックを前に「東京2020」の文字が点灯された
写真=iStock.com/Joel Papalini
※写真はイメージです

けれどもそれは、たまたまコロナ禍に見舞われたからそうなった、という話です。それよりも僕は、どんな学びを引き出すかが東京大会の真のレガシーになりうると考えています。今後日本は、オリンピックのような国を挙げてのイベントをどうこなしてゆくのか、考えてみましょう。

日本が今後一切オリンピックや万博をやらない国になる、という選択肢もゼロではないと思います。

ただ僕としては、国家による「パンとサーカス」にはそれなりの意味があると思っています。オリンピックのようなイベントは「サーカス」に当たります。一発逆転の切り札、みたいに過度な期待を寄せて招致に動くのはリスキーですが、景気へのカンフル剤という面では、効果的な場合はあるでしょう。

万博に向けて3つの提言

いま僕が心配してるのは3年後に予定されている大阪・関西万博です。オリンピックなら、やることはだいたい決まっているし、日本が強い競技も数多くあるので、開催すれば一定の盛り上がりは得られます。しかし万博となると、やること、できることの自由度が格段に高い。

来場者の方にさまざまな展示を楽しんでいただいた上で、ひとつのコンセプトにつらぬかれた、統一感のある体験を提供できればベストなのですが、はたしてどうなることか。そもそもまだ万博を開催することを知らない人も少なくない状況で、これから開催地はもちろん、全国的な盛り上がりが望まれます。

万博を成功させるために必要だと思うことは3点あります。

1点目は、元気のいいベンチャー企業を巻き込んで、昭和色を払拭してゆくことです。次代のジャパニーズカルチャーを担うベンチャー企業を世界に向けてプレゼンできなくては、万博の成功はありません。

ちなみに今度の万博のテーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」です。このテーマにふさわしい展示が見せられるベンチャーは日本にもたくさんあるでしょう。

万博で一堂に会したそれらのベンチャーが、展示終了後も競い合い、連携し合ってシュンペーターのいう「新結合」を生み出す。個人的にはそれくらいの展開を望んでいます。逆に、旧財閥系の企業やお堅い大企業のパビリオンが立ち並ぶようだったら、日本の停滞感を来場者に印象付けるだけになってしまう恐れがあります。