共和制移行の可能性を漂わせる英連邦王国

エリザベス女王の死が引き金となり、バルバドスに倣って立憲君主制ではなく共和制に移行しようとする英連邦王国14カ国(英国を除く)が相次ぐ恐れがある。オーストラリアでは共和制支持勢力が拡大しそうな雲行きで、ジャマイカやベリーズなどでは女王に続いてチャールズ国王を国家元首として頂くために国民投票が必要となるかもしれない。

その一方で英連邦には今年、アフリカのガボンとトーゴが加盟し、その数は56カ国に増えた。英国が世界のソフトパワーとして生き残れるかどうかはチャールズ国王の“外交手腕”にかかっていると言っても過言ではない。

チャールズ国王が皇太子だった時代には、慈善団体を巡ってサウジアラビアの大富豪が爵位と英国籍を取得するのをチャールズの側近が助けようとしたという疑惑が浮上。カタール元首相から寄付300万ユーロ(約4億1450万円)を一部現金で受け取った疑惑も噴き出すなど、王室は帝国時代の残滓とも言える“いかがわしいオカネ”との関係を断ち切れていない。

バッキンガム宮殿に入っていくチャールズ国王とカミラ王妃
バッキンガム宮殿に入っていくチャールズ国王とカミラ王妃(2022年9月9日、筆者撮影)

ウィリアム皇太子への「中継ぎ」として安全運転に徹するべき

また、自動的に「王子」と「王女」になると考えられていたヘンリー公爵とメーガン夫人の長男アーチーちゃんと長女リリベットちゃんの称号は「マスター」と「ミス」のまま残された。「海外で人生を歩むハリー(ヘンリー公爵の愛称)とメーガンに私の愛を伝えたい」というチャールズ国王の言葉とは裏腹に複雑な波紋が広がった。

アーチーちゃんとリリベットちゃんは米国籍を取得する可能性があるからだろうか。9月14日と国葬当日19日の葬送行進ではチャールズ国王やアン王女、ウィリアム皇太子ら“現役王族”は軍服を着用。王室離脱で公務を放棄したヘンリー公爵とアンドルー王子はモーニング姿で、軍の敬礼をすることさえ禁じられた。国王の意志により冷徹な一線が引かれた。

ヘンリー公爵とアンドルー王子は“引退王族”として扱われ、“現役王族”はチャールズ国王、ウィリアム皇太子とジョージ王子、シャーロット王女、ルイ王子の直系とアン王女やエドワード王子らサポート役に絞り、「小さな王室」を目指していくことを鮮明に印象付けた。

チャールズ国王はまずウィリアム皇太子とヘンリー公爵の骨肉の争いを克服できるのか。内外の課題は山積している。チャールズ国王はあまり多くを望まず、次のウィリアム皇太子にバトンを渡す中継ぎ役としての安全運転に徹した方が無難なのかもしれない。

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