親ガチャで当たりを引いた人は経験を金で買える

「勉強だってお金をかけた方が有利」という声もあるでしょうが、経験に関しては、財力のアドバンテージが勉学のそれを大きく上回っています。つまり、簡単に言えば「学力はお金で買えないが、経験はお金で買える」のです。そして、そうした経験を基に選抜をしてしまうと、難関大学には裕福な家庭出身の子弟しか行けなくなってしまうのです。

ここで「経験重視」がいけないかのように語られていることに疑問を感じた方も、もしかしたらいらっしゃるかもしれません。そもそも学力と実務能力は全く関係がありませんが、「実際に物事を経験してきた」という体験、そこでの活躍の大きさなどからは、実際にその人がどのような能力を持っているか、大いに察することができます。

となると、大学側、ひいては社会全体としては、「経験重視入試」の方が、より優秀で多様な人材を確保できるように思えるかもしれません。しかし、これが社会全体のためになるというのは大きな間違いなのです。それは、稀有な経験を積むことができるのは、それなりに恵まれた環境に生まれた人間のみ、過激な言葉を使えば「親ガチャ」に当たった人だけだからです。

教室で先生と話す女子生徒
写真=iStock.com/kazuma seki
※写真はイメージです

東大の推薦入試合格者が面接でプレゼンした「経験」の中身

僕は世帯年収300万円台の家庭に育ち、1年間の浪人生活を経てペーパーテストに合格し、何とか東大に入学することができました。実は、数年前から東大にも推薦入試が導入されています。僕にも、推薦試験で合格してきた友人が何人もおり、ある時、興味本位から彼らに「どんな面接だったのか」と聞いてみたことがありました。

すると、僕にも想像もつかないような答えが返ってきました。生物系の学部へ進学していったある友人は、「ただ教授とおしゃべりしていたら受かった」なんて言っていましたが、話を聞いてみると、幼いころから生き物への興味を持っており、様々な動植物を、時には輸入しながら飼育しているのだと言っていました。

また、別の友人に聞いたところ、海外の貧困地域や紛争地域に深く関心を持っており、様々な文献やレポートを漁ってみたり、時には実際に現地に査察に行ったりして、かかわりを深めていったのだそうです。そうして得られたデータで論文とプレゼン資料を完成させて臨んだ面接で、なんとか合格できたと語っていました。