日本の入試も学力重視から経験重視へ変わりつつある

そして、冒頭で述べた「日本はペーパーテスト重視」という常識も、もはや過去のものになりつつあります。ここ20年程度のなかで、私大を中心として、推薦入試やAO入試による入学者数の割合が激増しているのです。

文部科学省が公開しているデータによれば、2000年からの20年間で、AO入試、推薦入試による合格者数が1.5倍近くにまでも増加していることが分かります。これは国公立大学と私立大学を混ぜたデータであり、私立大学に限れば、2019年時点で半数以上の約55%がAO推薦入試を経ての合格者となっています。

私立大学を除いたとしても、国公立大学も含んだすべての大学において、AOや推薦入試による合格者数が、割合としても実数としても増えていることが分かります。僕にはこれが、日本の入試もどんどん経験重視になっているように思えて仕方がないのです。

経験重視型の社会は社会的弱者を排除してしまう

短期的には、経験重視型の入試の方が、合格者の多様性確保などの面で様々な効用があるかもしれません。しかしながら、経験重視型の入試を下手に導入してしまうことは、社会的な弱者を排除してしまう結果になります。これは貧困層に限りません。

例えば、お金があったとしても持病の関係であまり活動ができなかったり、時には介助者が必須となる方もいらっしゃるでしょう。実際に、僕が東大に通っていた時にも、移動式のベッドに乗ったまま介助者の方と登校されて授業を熱心に受けていらっしゃる学生の方がいました。

推薦入試といえば「多角的な視点から多様な人材を」というような、魅力的で進歩的で甘美な響きを想像してしまいがちですが、むしろこれは人材の幅を減らすものであると考えるべきだと思います。もしもこの入試制度を日本でも大きく導入していきたいのであれば、やはりその枠の大きさを調節したり、審査基準をある程度公開するなどして透明性を担保したりする必要があるでしょう。