その後、アディスアベバの中心部を移動していると、今度は開通したばかりの新都市交通システムが現れた。

ここはエチオピアだし、利用客ももちろんエチオピア人。でも、この景色だけを切り取れば、ヨーロッパあたりのどこかの街とも言える景色である。続けてドライバーがいう。

「この借金も返せないだろうよ。でもね、俺たちは道路や電車のおかげで本当にハッピーなんだ。中国には感謝してるよ」

日本以上に中国のものは世界で求められている

この頃からだろうか。筆者の中にも、“スタンダードというのは異なるものだ”という気持ちがより芽生えるようになった。今でいうところの、“ダイバーシティ”と呼ばれるものだろう。

昨今、SDGs(持続可能な開発目標)をはじめとして、いろいろな分野で“ダイバーシティ”といった言葉を聞くようになった。

ところが、片やアフリカや南米等でこうした社会インフラビジネスを見ると、

“スタンダードって、ダイバーシティってなんなのだろう”

と思わずにはいられなくなった。それを顕著に感じたのが、この鉄道ビジネスである。

小林邦宏『鉄道ビジネスから世界を読む』(インターナショナル新書)
小林邦宏『鉄道ビジネスから世界を読む』(インターナショナル新書)

日本企業が世界にてビッグディールを成約したとき、もしくは大きな活躍をしたとき、新聞等のメディアではよく取り上げられる。

それで、誤解が生まれる。

「日本のものは世界で求められているのだ」

と。自信を持っていえるが、それは違う。

報道されているようなビッグディールや海外ビジネスはごくわずかで、それと比べて1桁も2桁も上回るディールが中国系企業によってなされているということを。

そして、それは、現地で少なからず受け入れられているということを。

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