デキる人は恩の扱い方を熟知している

接客業という仕事に限らず、仕事でもプライベートなお付き合いでも、すべての人間関係において同じことが言えるのではないでしょうか。私がいろいろとして差し上げるのは、「クラブ由美」を大事にしてくださるお客様への「恩返し」なのです。

ですから、「チケットをとってあげたのだから――」「○○さんを紹介してあげたのだから――」という気持ちは一切ありません。だって見返りなど求めていないんですから。ビジネスの世界でも取引先などとのやりとりのなかで、「恩を売る」とか「恩を受ける」という話がでてくることが少なくありません。こうした場合の「恩」の扱い方は難しいといわれます。

あくまで気持ちの上での問題であって、金額や数字では表せないものだからでしょう。だからこそ「恩」の扱い方が上手な人というのは、仕事でも仕事を離れたところでも、一目置かれるようなデキる人になれると思います。実は、恩の扱いはそれほど難しくありません。むしろシンプルです。

要するに、「売った恩は忘れましょう。受けた恩には報いましょう」ということです。「やってあげた」「わざわざしてあげた」と思うのはやめましょう。でも「してもらった」ら、その恩は決して忘れずに何かの形でお返しをしましょう。これだけのこと。そして、デキる人は、例外なくこれを実践しているはずです。

売った恩は忘れてしまうくらいでいい

取引先が困っているときに無理ともいえる依頼を受けて、こちらもかなり苦労をしてその場を乗り切ったというケースなどでは、相手は「恩に着ます」という気持ちでいることでしょう。

そういうときも「いやぁ大変だった。今回は特別だから貸しにしておくよ」などと恩着せがましいことを言わず、「お互い様ですから。上手くいってよかったですね」と何事もなかったようにサラリと言ってのける。そういう人には相手も自然と「この人には何かお返ししたい」と思うでしょう。いい人間関係、ビジネスを超えた信頼関係というのは、こうして築かれていくものなのです。

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後々、相手より優位に立つためとか、見返りという利益を得ようとする目的でしてあげるのは、もう相手のためではなくただの計算高い取り引きでしかありません。ビジネスという視点だけで考えればそれでもいいのでしょうが、結局、そこにいるのは人間です。

人は「困っているだろうから、何とか手を貸してあげたい」という純粋な気持ちなのか、「恩を売るいい機会だ」と思っているのか、本能でわかるもの。計算ずくで売られた恩では、計算ずくの見返りしか得られません。売った恩は忘れてしまうくらいでいいんです。忘れてしまった恩は、それこそ“忘れた頃に”何かをもたらしてくれるかもしれません。

「恩」という文字は原因の「因」に「心」と書きます。「因」とは人との交わりや人間関係のこと。つまり恩とは、「さまざまな形で自分に関わってくれている人々のおかげで、今の自分があると知る心」という意味にとることもできるでしょう。デキる人は、そのことをよく知っているんです。

恩着せがましい人

「やってあげた」「無理を聞いてやった」などと恩着せがましく言う人ほど、自分が恩を受けたときには「やってもらって当然」と思うもの。そういう人に人望は望めません。

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