「バイアス」には要注意

【勘違い③】「自分の経験と知識で考えよう」と思っている

根拠がない思い込みで行動を抑止する人がいます。最近では、そういう状況を「バイアスがかかっている」と言うことが増えてきました。

「バイアス」は、先入観や偏りという意味で、考え方や判断を偏らせる原因となるものです。

コロナ禍で多くのビジネスパーソンがテレワークを初めて経験しましたが、戸惑いの連続だったと思います。自宅での仕事環境が整いにくかったり、仕事とプライベートのオンオフが切り替えづらかったり……。

とくに困難に直面したのが、企業の管理職と経営幹部でした。目の前にいない部下たちを管理する経験はなく、さらに、オンライン会議やビジネスチャットなども駆使しなければならなくなりました。ITを使うことが苦手な中高年には、すっかり参ってしまった人がいたはずです。

また、「努力」と「忍耐」が評価されて管理職になった世代の人には、私服を着てリラックスしながら家で仕事をするスタイルに心から同意できない人も多くいました。

パズルのピースからの脳と碑文バイアス
写真=iStock.com/designer491
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上司も部下もバイアスで粗探しを始める

そうした管理職は「観察者バイアス」「確証バイアス」がはたらき、結果として、部下たちの粗探しをするようになってしまいました。

テレワーク中に連絡をとれないことが1~2回あっただけで、「テレワークでサボっている」とその部分にフォーカスし、部下に出社を促す管理職がかなりいたと耳にします。

そもそも、オフィスにいてもすぐに連絡がつかないことがあったり、ビジネススーツを着ていてもリラックスした状態で仕事をしたりすることはいくらでもあるのですが、“そこ”には意識が及ばないのです。

バイアスで正しい判断ができないのは、管理職だけではありません。

「真面目に努力していれば評価してもらえる」「苦労する姿を見せれば、いつか上司は同情してくれる」「あの人はプレゼン下手なのに、なんで評価されているんだ。納得できない」……。部下の立場の人たちにありがちなこうした考えにも、「確証バイアス」と「観察者バイアス」がかかっています。