メンバー、スタッフとの「関係」がヒットにつながった

③リアルなメッセージ

BTSはそれまでのK-POP音楽とは異なり、10~20代が共感できるメッセージを音楽にこめました。そして、そのメッセージをあらゆるコンテンツに取り入れ、連続的かつ持続的で一貫性のある企画・制作を行い、発信しました。こういった活動が熱狂的なファンを生み、強力なファンダムの形成につながりました。

これらを実現できたのは、BTSメンバーが10代から20代に、少年から男性へと成長していくなかで経験する悩みとプロセスを余すところなく見せたからです。自分たちの音楽や物語をリアルに伝えるために、さまざまな方向から考え、新たな方法を模索しました。

BTSの成功は、実力はもちろんのこと、一人ひとりの個性やメンバー同士の仲のよさ、つながりがメッセージを伝えるうえでどれだけ重要な役割を担っているか物語ると同時に、未来のアイドルの進むべき道を示しています。

アイドルの大半がグループで活動するだけに、メンバー同士のチームワークや関係は言うまでもなく、プロダクションやまわりのスタッフたちとの関係をどのように築いていくべきか、そしてそういった「関係」がヒットへとつながることを見せてくれたケースです。

「運がよかった」と評価する人に言いたいこと

このように、世界的なビッグヒットのためには、産業の画期的な変化やすべてが一致するタイミングなど、環境的な要素による裏付けも不可欠です。

ユン・ソンミ『BIGHIT K-POPの世界戦略を解き明かす5つのシグナル』(ハーパーコリンズ・ジャパン)
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そのため、ヒットするアイドルの成功要因を分析するときに「運がよかった」、「タイミングがよかった」と結論づける人もいますが、チャンスが来たときにそれをつかみ取り、維持するためには、そのための準備が必要不可欠です。

たった一度のヒットは準備なしでも可能かもしれませんが、皆から認められる「成功」は、その意味も価値も大きく異なります。

BTSが新人のころから蓄積してきたコンテンツがなければ、メッセージのこもった確かな音楽がなければ、メンバー間の信頼を築いてこなければ、チャンスをつかめずに逃していたかもしれません。

プロダクションとメンバーが信念を持って準備してきた積み重ねがあったからこそ、前進を続けられたのではないでしょうか。その結果と成果は、今や全世界が知っています。

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