40代に比べたら、50代の年金の下がり方はまだ少ない

50歳になると日本年金機構から届く「ねんきん定期便」に、年金見込額が記載されます。

ですから、50歳になった方は、自分がおおよそどれくらいの年金をもらうことができるかということは、「ねんきん定期便」で予測することができます。

ただ、この「ねんきん定期便」の支給額通りに支給されるのかといえば、状況によって変わります。

なぜなら、前項で書いたように、「マクロ経済スライド」で、物価や賃金が大きく上がれば「年金額」も上がりますが、物価や賃金の上昇に比べると上昇幅が抑えられるからです。

また、物価がどんなに上がっても、賃金が下がっていれば、下がった賃金にスライドして年金の給付額も下げられます。

経済は、常に動いているので、物価も賃金も長期的に予想することは不可能です。

ただ、一つ言えることは、確かに現在年金をもらっている方たちよりもらう額は下がりますが、40代に比べたら、50代の下がり方はまだ少ないということです。

2040年に15%、2060年には30%の目減りか

年金では、その時々の経済の実情を反映するように、5年に1度「財政検証」が行なわれています。これは、年金が、今どうなっているのか、この先どうなりそうなのかという見通しを現状から推測し、結果を公表するものです。

直近では、2019年に行なわれましたが、このデータを見ると、2040年には、今「年金」をもらっている人に比べて15%前後目減りし、2060年には30%ほど目減りしているのではないかと予想されています。

ただ、2060年といえば、今50歳の方は90歳近くになっているので、今のようにバリバリお肉も食べなくなっているでしょうし、洋服に気を使ったり、車を乗り回したりというようなアクティブな生活もしなくなっている可能性がありますから、年金が3割減っても、生活にはそれほど影響がないのではないでしょうか。

ソファに座っている笑顔の男性
写真=iStock.com/metamorworks
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いきなり「明日から70歳支給」はあり得ない

50代が年金をもらう頃には、年金の受給開始年齢の引き上げがあるかもしれません。ですから、「もし、70歳受給開始になっていたらどうしよう」と不安になる方もおられるでしょう。

ただ、これもそれほど心配する必要はなさそうです。

確かに、政府は、年金をなんとか70歳支給にするために、70歳まで働ける環境を着々と整えています。企業が70歳まで社員を雇うようにしたり(今のところは努力義務です)、年金を75歳からかなり割り増しでもらえるようにもしています。

ですから、いずれは70歳から受給ということになるのでしょうが、今50代の方は、70歳支給になっても、それほど大きな影響は受けないと思います。

なぜなら、いきなり「明日から70歳支給」というのではなく、老齢基礎年金の支給年齢を徐々に引き上げ、そのあとに老齢厚生年金の支給年齢を徐々に引き上げていくことが予想されるからです。

図表1は、60歳から65歳への引き上げ状況ですが、約20年かかっています。

そういう意味では、今の50代は、年金は目減りしますが、それほど大きな影響は受けないと思います。