厚労省の「財政検証」は、2040年の年金受給額は15%前後目減りし、2060年には30%ほど目減りすると予想している。現役世代の老後はこれからどうなるのか。経済ジャーナリストの荻原博子さんは「いまの40代は本気で年金の目減りを覚悟しておかなければならない。老後になって慌てないために3つの大原則を徹底してほしい」という――。

※本稿は、荻原博子『知らないとヤバい老後のお金戦略50』(祥伝社)の一部を再編集したものです。

後ろ姿の老夫婦の手前に金の貯金箱とコイン
写真=iStock.com/AlexSava
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800兆円の不足でも公的年金は破綻しない理由

多くの人の「老後生活の大前提」は、「公的年金」でしょう。

そこで気がかりなのは、公的年金が「破綻はたんしないか」ということ。公的年金が破綻すると、すべての老後計画が、根本から崩れてしまうからです。

なぜ「破綻」という話が出てくるのかといえば、年金財政が悪化しているから。

荻原博子『知らないとヤバい老後のお金戦略50』(祥伝社新書)
荻原博子『知らないとヤバい老後のお金戦略50』(祥伝社新書)

日本では、公的年金に10年以上加入している人は、必ず年金をもらえると政府が約束しています。こうして、すでに加入者のみなさんに支払いを約束しているお金(年金受給権が発生しているもの)は、現在1000兆円を超えています。

年金では、そのための積み立てもしていますが、その将来の支払いのために積み立てているお金は、なんと約200兆円しかないのです。

約1000兆円から約200兆円を引くと、約800兆円。こんなに支払うお金が不足していては、誰もがこのままでは「公的年金は、破綻する」と思うのは当然でしょう。

ただ、結論から言えば、日本の国が「財政破綻」しない限り、公的年金も破綻しません。その理由を、お話ししましょう。

国民に年金の受給権があってもツケとして先送りできる

今の日本の年金は、「年金を払います」という約束をしている額は、既に積み立てをしている額に比べて極端に少ない状況にあります。

これは、過去の大盤振る舞いやずさんな管理、予想ミスなどで、超高齢化社会に対応できるだけの充分な積み立てをしてこなかったためです。

ただ、なぜこんな状況でも公的年金が破綻しないのかといえば、10年加入して受給権(年金をもらう権利)が発生したからといって、公的年金は、今すぐにみんなに支払わなくてはならないものではないからです。

公的年金がもらえるのは、65歳から(早くもらいたい人は、目減りしますが60歳からでももらえます)。

10年加入して年金の受給権があったとしても、65歳までもらうのを待たなくてはいけないので、国はそのぶんをツケとして先送りできるということです。