先入観はコミュニケーションを台無しにする

いくつになっても、好奇心と新鮮な驚きを感じながら生きていきたい。それがなくなったら、ジャーナリストとしては完全に終わりです。

ところが、情報化社会の中で、私たちは新鮮な驚きを感じにくくなってしまっているんじゃないか、と思うことがあります。

いろんな情報が巷に溢れています。だからたいていのことは目にしたことがある、聞いたことがある情報ばかりです。しかも、いずれの情報も色がついているから、知らずにそれに染まってしまいます。

いろんな情報を身につけた結果、より柔軟で幅広い見方ができるならいいでしょう。

ところが現実は逆で、半ば意図的に流される情報によって、先入観や固定観念に縛られてしまうわけです。自由にモノを見る柔軟性を失い、新鮮な驚きもなくなってしまうのです。

でも、本来虚心坦懐たんかいに相手に向き合えば、いろんな新しい発見があるはずです。その点、とても面白かったのが、『新L型経済』で対談した冨山和彦さんの話でした。

30万人の都市に中央からのお金は不要

冨山さんは、これからの日本を救うのは地方だと言いました。ただし、これまで語られてきた地方創生の流れとはまったく違っています。

これまでの枠組みは、田中角栄さんの「日本列島改造論」にしても、竹下登さんの「ふるさと創生事業」にしても、結局は中央からお金をバラ撒いて地方に還元するというモデルでした。

ところが、そのモデルはもはや時代遅れだと言うわけです。そもそも国に、そんなにお金はありません。それから中央のお金を当てにしている時点で、真の地方創生などできないでしょう。

冨山さんは、30万都市がポイントだと言うんです。日本全国に30万都市はいくつもありますが、30万人の人口があれば、ほぼ自己完結的で自律的な経済圏が自ずとできあがると。つまり、中央からお金をもらう必要はありません。

白い広いフロアを歩く人々
写真=iStock.com/Chaay_Tee
※写真はイメージです

むしろ、旧モデルにどっぷりの中央集権的で官僚的な中央圏よりも、地方の中小企業や起業家の方が自由な発想ができる可能性があります。

それによって、自律的でユニークな発想に基づいた地域経済圏が誕生しうる、と言うわけですね。

冨山さんは閉塞したいまの時代、日本が新たに息を吹き返すとしたら地方がポイントだと言います。お金じゃなくて、人が集まれば経済圏ができる、と。