新型ベースモデルは「初代の47万円に匹敵する」

ところで、試乗したアルトの価格は「2トーンルーフカラー」と「フロアマット」のオプション品を含んだ税込みで131万9615円だが、この車両価格が新型アルト登場時に話題となった。

鈴木俊宏社長自ら「新型のベースモデルである94万3800円(税込み)は、物価上昇率や装備内容を踏まえれば初代の47万円に匹敵する」と発言したからだ。

たしかに考えてみれば、初代の1979年当時には現在のような優れた衝撃吸収ボディやABS/エアバッグなどはなく、2021年11月に装着が義務化となった衝突被害軽減ブレーキも当然ない。税抜きの車両本体価格同士で比較すれば新型が38万8000円高いわけだが、なるほど経済状況やクルマ造りから考えれば、鈴木社長の言葉通りだ。

2021年に販売された新車の軽自動車(軽四輪車)の販売台数は165万2522台。これは登録車を含めた444万8288台の約37%に及ぶ。このうちスズキは、50万9169台を同期間に販売している(台数は全国軽自動車協会連合会と日本自動車販売協会連合会調べ)。

初代アルトは1979年に発売され、2021年11月末には累計販売台数526万台を達成した。アルトは名実ともにスズキを代表する車種である。

新型アルト 運転席周り
筆者撮影
運転席周りの操作性はとても良好。インパネセンターのシフトノブも1段ごとクリック感がしっかりしていて誤操作しにくい

「ワゴンR」の台頭で、販売台数の伸びが鈍化していた

歴代アルトは人気車種であり、累計販売台数300万台は4代目の発売(1994年11月)直後である1995年に達成していたが、その後、販売台数の伸びが鈍化する。要因のひとつは、同じくスズキが生み出した軽自動車「ワゴンR」(1993年9月)の台頭だ。

背高ボディが与えられ、広いキャビンとともに、少し高められた着座位置によって得られる広い視界にユーザーは魅了され、ワゴンRはたちまち人気を博した。

同時に、ワゴンR人気に対抗すべく背高ボディの競合車(例/ダイハツ「ムーヴ」1995年8月)が市場に送り込まれた。こうした競争にさらされながら、アルトは5代目~8代目まで一定の支持は受けながらも販売台数自体は各世代とも50万台程度に落ち着いていた。

9代目となった新型アルトの発売に際し、スズキの鈴木社長は「アルトが属する軽セダンの市場は縮小傾向にあります。しかし、生活の足となる、使いやすい手頃な軽セダンをお求め頂く声を未だに数多く頂いており、今後も大切に守り続けたい」と、アルトの存在意義を熱く語った。