「大量の贋金を作る」というプランまで持っていた

また、薩摩藩へ出張する海援隊士の岡内俊太郎に、「君必ず新貨を得て帰れ。土(土佐藩)もまた之にならはざるべからず」(千頭清臣著『坂本龍馬』)と告げている。

河合敦著『関所で読みとく日本史』(KAWADE夢新書)
河合敦著『関所で読みとく日本史』(KAWADE夢新書)

新貨とは、偽造貨幣のことである。薩摩藩は、天保通宝などを大量に偽造して、莫大な利益を上げていた。龍馬は、これを真似て土佐でも贋金造りに精を出すべきだと主張し、岡内に贋金を持ち帰るよう命じたのである。

銀座に匹敵する量の莫大な贋金をつくって、これを巷に流通させたなら、いったいどういうことになるか。おそらく、貨幣鋳造の実権は、おのずと薩長土のほうへ移行していく。龍馬はそう読んだのである。

このように、金融・経済の重要性というものを熟知していたからこそ、龍馬は下関の関門海峡に「海の関所」をつくるという大胆な計画を立てることができたのだろう。

そのプランは、中世の海の関所をバージョンアップし、さらに天下の情勢を左右するものだった。もし龍馬が暗殺されていなければ、歴史は変わっていたかもしれない。

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