「売れている商品はグロシールから下へは、自動的に流れていく。というのは、230万軒のワルンの人たちが、グロシールに仕入れに来てくれるからです」(山下)。だから、ワルンと消費者、双方に営業をしなければならない。

そこでフマキラーは、いまジャワで「キャンバスバンセール」と名付けた市場開拓活動を展開している。フマキラーの営業マンとMDと呼ばれる女性2人の3人がチームとなって、日本で言えば郡に当たるクチャマタンを担当する。現在、42台のキャンバスバンを展開。バンに乗ったキャンバス隊が、郡のすべての集落を訪問する。営業マンはワルンを一軒一軒訪れて商品を説明し、置いてもらう。その間に、MDは周辺の家庭を訪問して、試供品を配って回る。試供品を気に入ってくれれば、消費者がワルンに買いにきてくれるという仕掛けだ。

クチャマタンはジャワだけで、実に1200以上あるという。「本当に気の遠くなるような活動」(山下)だが、あるクチャマタンを抑えたら、次のクチャマタンを抑え、5年後には日本でいう県レベルを抑えようという地道な作戦だ。

インドネシアでも所得の増加に合わせて、ノンコイル製品の需要も増加しつつあるが、線香の市場は小さくなるどころか並行して拡大している。線香すら購入できなかった層の所得が増加しているのだ。成長を続けるインドネシア。フマキラーの推定ではあるが、ジャワ以外の線香市場では、シェアはほぼ40%に達し、ナンバーワンに躍り出た。収益も確実にあげられる体制を構築したいま、激戦区ジャワ開拓に挑む。

「(09年から)最後に残っている最大マーケットであるジャワを攻略すべく、本格的に取り組んでいる」(山下)

(文中敬称略)

※すべて雑誌掲載当時

(撮影=滑 恵介)