家族経営の中小企業にとって、後継者問題は会社の存続にかかわる大問題だ。事業承継に詳しい弁護士の島田直行さんは「事業承継でありがちなのが後継者の兄弟や母親(先代の妻)を経営陣として参画させるケースだが、家族間のトラブルが起きるケースが多い」という――。

※本稿は、島田直行『社長、その事業承継のプランでは、会社がつぶれます』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

屋外に置かれたチェアに背中合わせで座る2人の男性
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親心が招く兄弟間の骨肉の争い

事業承継の問題は、先代が倒れたときに顕在化する。それまでは仮に問題があっても先代の顔ひとつで押さえ込めていたものが、一気に吹きだすようなものだ。

ここで言う「先代が倒れた場合」とは、亡くなった場合に限らず、事故や病気で判断能力を失った場合も含まれる。典型的な問題となるのが、兄弟間の確執だ。「同じ会社に複数の子どもを入れるべきではない」と何度も耳にしているにもかかわらず、親心から入社させるケースが少なくない。

もちろん、兄弟がうまくバランスをとって、自社を発展させるケースもあるため、一概に危険だとは言えない。ただし、成功するのは、後継者にならなかった者が、自分の立場を理解して、ナンバー2として生きることを覚悟できた場合だ。子どもらを入社させる場合には、先代として自社における序列を明確にしておく必要がある。そのうえで、「社長の方針に合わないなら、辞表を出すように」と厳命しておくしかない。

ありがちな失敗は、とりあえず複数の子どもらを入社させ、様子を見たうえで後継者を決めようとすることだ。ともに働くほど、子どもとしてのかわいさから、先代としても決めることができなくなる。

兄弟間でもめる3つの理由

それまで仲の良かった兄弟に軋轢が生まれてしまう理由は、大別して以下の3つある。

①「兄弟姉妹だからこそ、話せばわかる」という誤解

「本音で話すことが大事」と言われるものの、現実社会において本音で話せる機会などないに等しい。実際には立場の異なる相手の心情に配慮しながら、言葉と行動を選択し、妥協点を見いだすことになる。いわば「ホンネとタテマエ」ということだ。

これはもちろん経営においても該当する。社員から何か要望があったときに、頭ごなしに否定すれば、すぐに離職することも珍しくない。腹が立っても、社員の意見を聞きつつ、解決案を見いだすようにしていかなければならない。兄弟の場合には、こういった配慮が「家族だから」ということで、十分に機能しないことがある。