プロ野球・千葉ロッテマリーンズは、球団設立以来50年間、ずっと赤字(単体)だった。だが、2018年に球団創立以来初の単体黒字を達成した。元銀行マンで、2014年から社長として再生を手がけた山室晋也さんは「以前はマリーンズブランドを自覚している社員が一人もいなかった。社内で徹底的に話し合い、『3つのブランド』を明確化することから始めた」という――。

※本稿は、山室晋也『経営の正解はすべて社員が知っている』(ポプラ社)の一部を再編集したものです。

ZOZOマリンスタジアム
写真=時事通信フォト
2017年4月15日、ZOZOマリンスタジアム(千葉マリンスタジアム)=千葉県千葉市美浜区

球団運営は「広告代理店の経営」と同じ

「ロッテブランドを高めてほしい」

オーナーからいただいた「3つの指令」のひとつです。おそらく、日韓をまたぐ巨大なコングロマリットのロッテグループのブランド価値の向上という意味での発言だったと思いますが、子会社の立場で全社のブランディングは困難であるため、私なりに千葉ロッテマリーンズのブランド価値向上に置き換えました。

選手が入れ替わっても、監督・コーチが入れ替わっても、千葉ロッテマリーンズというチームのファンが変わらずファンであり続けたいと思い、新たに野球を見始めた人が「千葉ロッテマリーンズを応援したい」と思うような何か。それが千葉ロッテマリーンズの「ブランド」なのでしょう。

「マリーンズブランド」を高めるも何も、そもそも「マリーンズブランド」とは何なのか。社員に聞いてみても、自覚している人は誰もいませんでした。

そのためまずは「マリーンズブランド」を明確にすることからのスタートでした。そのような状況を知ってか知らずか、外部のコンサルティング会社が「御社のブランディングを手伝います」と営業をかけてきましたが、私はすべて断りました。

球団運営とは、「広告代理店」のようなものだと私は考えています。「千葉ロッテマリーンズ」というチームをコンテンツ化し、グッズを製作して販売したり、球場やユニフォームに広告を出稿してもらったりしているわけですから、「広告代理店」というニュアンスもわかっていただけるでしょう。

「千葉ロッテマリーンズ」というコンテンツを商品としている広告代理店が、「千葉ロッテマリーンズ」の価値がわからず、ブランディングを外部のコンサルタントに任せる。こんな笑い話はありません。

私たちは自社内で、「マリーンズブランドとは何か」を話し合うことにしました。