経済小説『ハゲタカ』で作家デビューした真山仁氏。16年目にして初のノンフィクション『ロッキード』(文藝春秋)を書き上げた。その狙いはどこにあるのか。真山氏に作品に込めた思いや、小説家を目指した理由を聞いた――。(第3回/全3回)
『ロッキード』を出した小説家の真山仁さん
撮影=プレジデントオンライン編集部
ロッキード』を出した小説家の真山仁さん

デビュー16年目にして初のノンフィクション

——なぜ、今回は小説ではなく、ノンフィクションという手法で、ロッキード事件を描こうと思ったのでしょうか。

これまでも現実の出来事を小説の舞台にしてきました。ただ、ロッキード事件の複雑さ、未解決の部分を小説化してしまうと、逆に本質が見えにくくなってしまうのではないかと思いました。また、事件を深掘りして行くには、どうしても田中角栄ら関係者の人生や個性をきちんと調べて、明らかにしていく必要があると考えたのです。

取材自体は、小説を書くためにも行ってきたので、さほど苦にはなりませんでした。問題は執筆です。小説は取材したり、資料で調べたりした内容を咀嚼し、私なりの言葉で表現していく。取材した人たちが語った言葉やファクトに、必ずしもこだわる必要はありません。比喩的な表現になりますが、事実から飛躍し、物語にしていく作業が小説家に求められる力なのです。

しかしノンフィクションは、ファクトや証言者の言葉をひたすら積み重ねて書いていきます。たとえば、2つの出来事がつながっているとします。小説なら証拠がなくても、想像力を駆使して、2つをつないでしまえる。どうつなぐかが小説家の腕の見せどころと言えるかもしれません。

一方、ノンフィクションでは、証言やファクトで、2つの出来事のつながりの根拠を誰もが納得いく形で示さなければならない。はじめてノンフィクションを執筆して感じたのは、飛ぶことが仕事の小説家が、地面をひたすら歩き続けているようなもどかしさ、といえばいいか。その点は苦労しました。

小学6年生の頃に抱いた小説家になる夢

——真山さんはいつ頃から小説家を志したのですか?

志したのは高校生の時ですが、漠然と考え始めたのは小学生6年生の頃です。親の話や、ニュースを見聞きするうち、世の中にはロッキード事件に代表されるような筋が通らない事件や、出来事が多すぎると感じるようになりました。