「きみたちはホームワークをやりなさい」

ファルドと対照的だったのが、JPモルガン・チェースの現CEOジェイミー・ダイモンである。

現在53歳のダイモンは、ハーバード大学でMBAをとった後、16年間にわたってサンディ・ワイル(元シティグループCEO)の右腕として働き、1998年にシティグループを退職してからは、米国第六位の商業銀行バンク・ワン(本社シカゴ)のCEOを経て、2004年にJPモルガン・チェースのプレジデント兼COOに就任した。現場に根ざした経営者であり、複雑な証券化商品やデリバティブを詳細に理解し、的確な判断を下す能力を持っていた。

ファイナンシャル・タイムズの記者ジリアン・テットの著書「Fool's Gold」(邦訳未出版)には、JPモルガン・チェースのプレジデント兼COOに就任した直後に、ダイモンが初めてロンドンのデリバティブ・チームを訪問したときの様子が記されている。

ロンドンのデリバティブ・チーム側は、ダイモンに対して事前にブリーフィング資料を送っていたが、面談の初日の午前中一杯をかけて内容を説明するつもりだった。しかし、ミーティングの場に現れたダイモンは「資料を読ませてもらった」と一言いうと、非常に細かい質問を始め、細部に至るまできちんと内容を理解していた。

「きみたちは必ずホームワーク(宿題)をやらなくてはならない。わたしはいつもホームワークをしている」というのがダイモンの口癖で、事前に渡された資料は可能な限り頭に叩き込むのが習慣である(ちなみに筆者が見た邦銀の頭取・役員は、事前に渡された資料を読みもせずにやってきて、「あれ何て書いてあったんだ?」などと臆面もなくいう人物が多く、日米金融格差の現実を目の当たりにさせられた)。

※すべて雑誌掲載当時

(写真=AP Images、PANA)