鬼化した人間はハラスメントをしている自覚がない

4)トップの顔だけを見て行動する

鬼たちはまさにトップに気に入られようとして行動している。そしてそのご褒美として、鬼組織ではトップの血がもらえ、昇進できる。組織はトップの決めた方針にしたがって進むことが前提である。そういう意味では、鬼組織も組織としての体をなしている。しかし、その鬼組織では、トップの言葉が全てであり、トップが仮に「(黒いカラス)を見て、あのカラスは白いね」と言ったら、鬼たちは「はい、白いです」というだろう。このような状態であれば、組織が誤った方向に進んでいても、後戻りすることはできない。

企業内においても、かつて、白いカラスの話を例にあげて、組織はそうあるべきだといわれたことがある。つまり、トップが言ったことは絶対であり、正しいのであるという発想である。しかし、それが良いとされたのは、はるか昔の20世紀の頃までであり、21世紀になってからは、トップの勘違いや間違いを逆に指摘することで、よりよい組織へと向かっていくべきだとされている。変化の激しい現代では、トップや上司に忖度していては、あっという間に時代遅れになり、その組織は衰退する可能性がある。

下弦の壱、魘夢(えんむ)。鬼舞辻無惨配下である“十二鬼月”のひとり。
出所=劇場版『鬼滅の刃』無限列車編の公式ホームページより
下弦の壱、魘夢(えんむ)。鬼舞辻無惨配下である“十二鬼月”のひとり。

5)ハラスメントに気づいていない

鬼組織では、ハラスメントは日常茶飯事である。特にパワーハラスメントは常態化しており、一歩間違えば命の危険もある中で、鬼たちは活動している。ハラスメントの根底に情はなく、ハラスメントしている鬼たちにはその自覚はない。なぜなら、鬼組織ではそれが“文化”になっているからである。しかし、思いやりや人の情というに出会い、最期になって鬼が、本来の自分のあるべき姿とはどのようなものであったのかということを自覚する。

企業内においても、企業文化といわれるほど、その組織の雰囲気に慣れてしまうと、それが当たり前となる。企業文化が良い面に作用することもあるが、悪い面に作用することもある。厄介なことに、組織内の人はそれに気づくことができない。気づくことができるのは、外部の文化に触れたとき。そのときになってはじめて、自分たちを相対化し、自分たちがいかに世間からずれていたのかということに気づくことになる。

以上、『鬼滅の刃』に登場する鬼組織の特徴とその一員である鬼たちの特徴と、鬼組織に似た社風の企業や鬼的なビジネスパーソンに関して考察した。日本社会には最初は違っても、いつしか鬼の特徴を持った組織や人材に変質していることがあるため、注意が必要である。

激動の時代を迎えた今こそ、成長し続けられる企業とするため、鬼組織を反面教師にしていきたいものである。

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