仕事は会社ベースからプロジェクトベースへ

デタッチメントの流れは、仕事のあり方そのものも変えていくと考えられます。

間違いなく起こるのは、副業や兼業の常態化です。

リモートワークが拡大し、仕事の場が仮想空間へシフトすると、一人の人間がパラレルに存在し、複数の仕事に関わることが可能になります。

「週に2日働く正社員」といった募集も珍しくなくなり、副業や兼業を認めない会社は労働市場での価値が下がるでしょう。

さらにデタッチメントが進むと、仕事は会社ベースではなく、プロジェクトベースになります。たとえるなら、メンバーの固定性が高いロックバンドから、流動性の高いジャズバンドに変わるようなもの。今日はこちらに呼ばれ、明日はあちらに呼ばれと、その時々で違うメンバーと組んで演奏する。ビジネスパーソンもジャズミュージシャンのような働き方に変わっていくのではないでしょうか。

ユニークな人とそうでない人の格差拡大

ただし、あちこちから呼ばれるためには、「ぜひこの人と一緒にやりたい」と思ってもらえる何かが必要です。

私は、それは「ユニークネス」、その人ならではの個性や強みだと考えています。

物理空間と仮想空間の違いは移動コストです。人やモノが移動するには時間もお金もかかりますが、電子情報はほとんどコストをかけず、一瞬で世界のあらゆる場所へ移動できます。すると何が起こるかと言えば、世界中で一番良い人材を人々が選ぶようになります。

起業家
写真=iStock.com/whyframestudio
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物理空間では、あちこちから引っ張りだこになるような優秀な人材がいても、掛け持ちできる仕事には限界がありました。東京と大阪と福岡の会社から声がかかっても、移動を考えると、同時期に仕事を引き受けるのは不可能だったのです。

ところが仮想空間なら、午前中は東京の企業と打ち合わせをして、13時から福岡の企業と商談し、15時から韓国の企業との会議に参加する、ということも可能です。つまり、場所の制約と移動コストを考えずにグローバルで仕事ができるのです。

仕事を頼む側も制約がなくなるので、「この問題について一番良い提案ができる」とか「一番高いパフォーマンスが出せる」という人に仕事を頼めます。

これまでは「地元でこの仕事ができるのはあの人しかいないよね」という制約の中で選んでいたのが、仮想空間シフトによって、日本中、さらには世界中から「一番良い人」に仕事を頼めるようになります。

そうなると、「この仕事はこの人にしかできない」と思ってもらえるだけのユニークネスがないと、どこからも呼ばれません。仮想空間シフトは働き方の可能性を広げる一方で、自分ならではの個性や強みを持たない人には、とてもつらい状況だと言えるでしょう。