弁護士しかない!? 司法修習修了者の進路

弁護士しかない!? 司法修習修了者の進路

そこで02年3月に閣議決定された司法制度改革推進計画のなかで、「10年ごろには司法試験の合格者を年間3000人程度とする」との目標が定められ、新たな法曹養成機関として法科大学院(ロースクール)の新設も決まった。

そして計画通り事が進み、06年にロースクールの第一期生が初めて司法修習を終了し、新たに法曹の世界へ巣立っていったときの人数が1477人。その後07年が2376人、08年は2340人と順調に増えてきた(図参照)。

しかし、05年以降、検事の採用枠は100人を挟んで行ったり来たりの状態。08年の司法修習終了者全体に対する割合は4%にすぎない。また、判事補の枠にいたっては05年の124人がピークで、08年には100人の大台を割り込む始末。結局、あぶれた終了生が弁護士の世界に雪崩れ込み、08年の弁護士人口は5年前と比べて28.3%増の2万5041人にまで膨れ上がったのだ。

かように数字合わせ的に新人弁護士が大量に生まれてくると、玉石混淆の状態に陥ることが危惧される。実際、司法修習の教官の間で話題になっている「質の低下」にまつわるエピソードがある。

自動車の借り主を持ち主と信じてその自動車を買い受けても、自動車の所有権は買い手に移る。これを動産の「即時取得」という。一方、不動産である土地に関しては、買い受けただけでは不十分。先に別の者に登記をされてしまえば原則として所有権を主張できない。これは法学部の学生なら誰でも知っているイロハのイ。それなのにロースクール組の修習生に「不動産も即時取得できる」と堂々と主張する者がいて、開いた口が塞がらなかったそうだ。

いまや「弁護士=法律のプロ」とは限らない。司法制度改革は大訴訟社会の到来とともに、「法曹リスク」という新たなリスクを社会にもたらしつつあるのだ。

※すべて雑誌掲載当時

(構成=伊藤博之 撮影=若杉憲司)