「たかが罰金だろう。払えばそれで済むじゃないか」と高を括ってはいけない。懲役や禁錮刑だけでなく、罰金刑を科せられただけでも、立派な「前科者」になってしまう。もちろん、車を運転してスピード違反を犯した場合、罰金を科せられても前科はつく。前科は住民票や戸籍には記載されないが、居住市区町村で管理されている「犯罪人名簿」にしっかり記載されている。

いつ何時トラブルに巻き込まれ、訴えられるか誰もわからない。そんな大訴訟社会が到来していることを、私たちはここできちんと認識しておく必要がある。

訴訟のネタを血眼で探す弁護士

そうした大訴訟社会をヒートアップさせている要因の一つが弁護士の急増だ。弁護士といえば、「都心の一等地に事務所を構え、年収は何千万円」というイメージが強いだろう。しかし、いまでは多くの弁護士が仕事にあぶれている。

聞くところによると、経験十数年のベテラン弁護士でも、しばらく稼ぎがなくなると、容赦なく事務所を解雇されたり放逐されたりすることが多くなっているそうだ。借金をしながら食いつなぎ、やっと見つけた事務所の年俸は500万円以下。会社勤めをしていたほうが、よっぽど実入りがいい。また、「弁護士会の毎月の会費4万円強を払うのも苦しい」との嘆きの声をよく聞く。そんな食い詰めた弁護士が「飯の種=訴訟沙汰」を血眼になって探し始めているのだ。

どうしてそうなったのかというと、司法制度改革のなかで、法曹人口の拡大策がとられたから。表向きの目的は、本来司法が解決すべき事柄の8割が政治的な決着や行政指導などで解決されている「2割司法」の状況を打開することだった。しかし、種明かしをすると、その発端は検察官不足の解消にあった。

第43期の司法修習生である私の同期は約500人。1年前に修習を終了した第42期では、採用枠50人に対して実際検事の道を選んだのは20人にも満たなかった。各都道府県にある地方検察庁のトップが検事正だから、「これなら全員検事正になれるね」という冗談が出るほど、検事は人気がなかったのだ。バブルが弾ける前ということもあり、大手の弁護士事務所から高給での誘いが多かったうえ、検事は転勤が多くて敬遠されていたようである。