基地整備だけが赤字の根本原因ではない

しかし全体では、「モバイル」事業の基地局整備投資がかさんだことにより824億円の損失を出し、純利益は274億円の赤字に転じています。

この赤字の要因となった、「モバイル」事業でカギとなってくる基地局の建設について、楽天の三木谷浩史社長はオンライン会見で「基地局の建設は爆発的なスピードで進んでいる」と述べており、従来の計画を大幅に前倒しし、来年のうちに電波の人口カバー率を96%に近づけたいと伝えています。

この発言からも「モバイル」事業を積極的に拡大させていく意向であり、むしろ「ここからが始まり」だということなのです。

ところが、赤字がかさんだのは基地局の整備費用だけではなく、利用者獲得のためのキャンペーン費用の増加も利益を圧迫しているようです。

楽天モバイルは、6月30日には早くも100万契約を突破したと発表するなど順調なスタートを切っています。料金プラン「Rakuten UN-LIMIT」の契約者300万人が1年間無料で利用できるキャンペーンを実施。また、Rakuten UN-LIMITを契約すると、オリジナル端末の「Rakuten Mini」などを1円で購入できるキャンペーンなどを相次いで実施しており、これらのコストが重くのしかかっています。

現在、契約している100万人の多くは、1年間だけ無料で利用できる「お得感」につられて契約しています。キャンペーンで釣られた利用者は楽天モバイルにとって固定ユーザーではなく、いつでも消えてしまう利用者だと言えます。このキャンペーンで新規獲得した利用者が、2年目に入っても継続するかどうかがポイントになるでしょう。

KDDIに払うローミング料金が首を絞める

さらに、楽天モバイルのネットワーク整備はまだ途上であるため、地下など多くの場所をKDDIとのローミングでカバーしています。契約数を増やし過ぎるとKDDIに支払うローミング料金が増えてしまうという状況下にあります。そのためにも、自前の基地局の建設を急いでいるわけです。

具体的に見ていくと、ユーザーは5GBまで無料で利用できますが、楽天モバイルはKDDIに対して、1GBあたり約500円を支払っています。つまり、ユーザーが5GB使い切った場合、1ユーザーあたり最高で毎月2500円をKDDIに支払わなければならないのです。

もし、申し込みがあったとされる100万人全員がKDDIローミングを5GB使い切ったとした場合、毎月25億円、年間300億円のローミング費用が楽天モバイルからKDDIに支払いが生じるわけです。このあたりのローミングコストと、自前の基地局の建設費用とのバランスがアクセルを踏んでいる楽天にとって重要になってくるでしょう。