障害者の賃金は安い。同じ職場で働いても、健常者は月10万円の「給料」なのに、障害者は月8000円の「工賃」ということもザラだ。だが、京都にそうした不条理を克服したフランス料理店がある。放送作家の姫路まさのり氏が取材した――。(第1回/全3回)

※本稿は、姫路まさのり『障がい者だからって、稼ぎがないと思うなよ。ソーシャルファームという希望』(新潮社)の一部を再編集したものです。

学生バイトは10万円なのに障がい者は月8000円

「出発点は、同じ人間なのに働くことの格差があることへの疑問でした」

上司と車椅子の男
写真=iStock.com/Natee127
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精神疾患や身体障害をもつ人々が働くフランス料理店・ほのぼの屋を立ち上げた中心人物である支配人の西澤心さん(55)は、店に込めた感情を、そう追憶する。

きっかけは、西澤が学生時代、兵庫県の障がい者施設でアルバイトを始めた頃に遡る。働き始めたばかりで不得手で失敗も当然。それでも受け取った給料は、時給で計算され、月に10万円以上になった。対して、同じ施設で同じように働く障がい者は、自分より年上にもかかわらず月8000円しか受け取っていなかった。それも、自分は“給料”なのに、障がい者は「工賃」と、お題目さえ違った。

「工賃が月8000円とか……考えられへんでしょ? 正直、僕なら一日働いたらもらえる金額です。なんぼなんでも少なすぎひんかと」

「工賃」とは、実は法律上は明確に定められておらず、通知などにより行政指導がなされているだけだ。本来は【物を製作、加工する労力に対する手間賃】(大辞泉)を意味し、収益の有無にかかわらず、労働コストに算入されるのが一般的だ。だが、障がい者施設における工賃は収益が出た場合のみ支給される。大部分の施設は、収益の少なさから工賃も極めて低く、お小遣い程度の支払いを余儀なくされている。