スキル評価をやめて、「この人を昇進させるべきか」に変えた

【山口】これはマズイというので、デロイトはスキル評価をやめていろいろな評価方法を試すわけですが、最もうまくいったのが「この人をマネジャーに昇進させたほうがいいと思いますか?」という設問に対して、①いますぐ昇進させたほうがいい、②まあいいと思う、③やめたほうがいい、④絶対やめたほうがいい、という4段階で答えてもらう方法だったと。

コンサルタントの山口周さん
撮影=プレジデントオンライン編集部
コンサルタントの山口周さん

【楠木】あー、わかりますね。ようするに総体丸ごとの総合評価。評価を要素分解しない。

【山口】この評価方法に変えて以降、「この人はマネジャーに昇進させたほうがいい」と評価をされた人で、昇進後にパフォームしない人は出なくなったというのです。

前回、スキルというものは、たとえばアカデミズムの世界でいえばジャーナルに載った論文の本数や論文の引用回数といった指標で、疑いようもなく計量できるけれど、センスを計るのは難しいというお話が出ましたよね。「この研究者の論文を世の中に出したらインパクトがある」という判断はとても難しい。ところがデロイトの研究によれば、「あの人は多分マネジャーをやれると思う」といった、非常に漠とした評価方法のほうが、クリアなスキル評価よりもはるかに高い精度で的中するということなんです。不思議じゃありませんか?

「この人、ピンとくるね」のほうが、たぶん正しい

【楠木】そのやり方ですべてを切っていければ、(人事や評価に関する)さまざまな課題がかなり単純に解決できますね。ただし、そこには大きな問題があって、評価した人が「なんでAさんはマネジャーになれると思うのか?」と突っ込まれたとき、「そう思うから」としか答えようがない。

一橋大学大学院教授の楠木建さん
撮影=プレジデントオンライン編集部
一橋大学大学院教授の楠木建さん

【山口】たしかに、×をつけられた人へのフィードバックが厳しいですね。「Bさんはマネジャーにはなれないと思う」としか伝えようがない。

【楠木】アカウンタビリティーがない。何事もby nameになってしまう。「うちの部署にはこういう能力を持った人がほしい」ではなく、「山口さんがほしい」といくことになってしまう。ところが組織はアカウンタビリティーを求めるものだから、どうしても要素分解をしてスキル評価をしてしまう。

【山口】人間が持っている能力を科学的に細大漏らさず要素分解して、片や、あるプロジェクトで要求される能力も徹底的に洗い出し、このふたつを照らし合わせて、最もよくマッチする人をそのプロジェクトのリーダーに据えるという方法をとったら、きっと世の中のあちらこちらで悲劇が起こります。「なんとなくこの人がいいんじゃないの」とか「この人、ピンとくるね」といった直観的な判断のほうが、たぶん正しいんです。