データだけによる意思決定は可能か

では、専門家を完全にお払い箱にしたり、彼らの判断の自由をすべて取り上げてコンピュータが指示するとおりに行動するよう命じたりするべきなのか。

たとえば、大多数のクレジット・スコアはその人がローンを返済するかどうかを予測する素晴らしい手がかりで、銀行は長年それによって融資するかどうかを自動的に決定してきた。

だが、ほとんどの場合、意思決定のプロセスから人間を完全に閉め出すことは実現可能でもなければ賢明でもない。

より賢明な方法は、最善のデータと知識から生み出された初期回答や決定を提示するコンピュータ介在プロセスの中に、人間の意思決定者を組み入れることだ。

初期回答や初期決定は、コンピュータが生み出した統計に基づくものになるが、専門家により優れた決定を下すチャンスを与える。初期設定より優れた決定はどれくらいの頻度で起き、それはなぜなのかを調べよう。そのデータを専門家自身と彼らの上司に伝え、数式と直感の両方をよりよいものにできるよう、決定の結果を観察しよう。

時間とともにデータは増え、より優れたコンピュータや計算式が生まれるはず。これによってコンピュータによる自動的な決定やコンピュータが介在する決定の市場シェアが拡大し、直感市場は縮小するだろう。

専門家が気の毒だという声があるかもしれないが、私に言わせれば、今日の、直感による決定や判断の影響を受ける側の人のほうがもっと気の毒だ。

(ディプロマット=翻訳)