中国の大手企業・アリババは、創業者自らが「4倍の給料を出しても引き抜けない」とアピールするほど愛社精神が強い。なぜなのか。中国で日本観光をPRする「行楽ジャパン」の袁静社長は「初任給は低いが、そのあとどんどん高くなる。また住居費や医療費の補助も大変手厚い」と指摘する——。

※本稿は、袁静『中国「草食セレブ」はなぜ日本が好きか』(日本経済新聞出版社)の一部を再編集したものです。

写真=Imaginechina/時事通信フォト
アリババ創業者の馬雲(ジャック・マー)氏

“格差婚”が認められるようになった一方で……

「○○さん、ついに結婚するらしいよ。でも、お相手の男性は賃貸住宅に住んでいるらしいんだよねえ……」

そんなことがママさんたちのランチの話題になるぐらい、男性が家をもっていることが、中国では結婚の大きな条件になっています。

中国語では「有車有房ヨウチャーヨウファン」といいます。自動車と家をもっている。実は、有車有房が結婚の条件になったのは、そう古いことではないのです。

袁 静『中国「草食セレブ」はなぜ日本が好きか』(日本経済新聞出版社)

かつては「門当戸対メントゥフートゥイ」ということがいわれました。門も戸も、家の格式のこと。当や対は、同程度という意味です。家庭環境や生活水準、育ちや価値観が似ていることが、まずは結婚の大前提とされたのです。

1990年代ですら、地方から出てきた男性が、上海や北京の女性と結婚するなんて、ちょっと考えられなかった。親が猛反対したのです。中国全土を人が行き来する時代を、親の世代は生きていません。北京の女性は、北京の男性と結婚するのが当たり前だった。都市戸籍と農村戸籍の違いがあって、配給の問題にもかかわっていたからです。

いまは本人たちが納得すれば、どこ出身の人とでも結婚できるようになった。ただし、そのために生活力がより要求されるようになった。だから「家をもっているかどうか」が、これだけうるさくいわれるようになったのでしょう。