自信のないサラリーマンが見つけた究極のテクニック

17年前、田島さんが1年間の留学から帰って就職したはじめての会社は、国際見本市主催会社だった。新卒から1年のブランクがあるうえに、MBA保持者でもなければ、特技もない。

「期待に沿う仕事ができなかったらクビになるという“危機感”がいつもありました。私にできることは、ただ目の前の仕事にのめりこむことだけ」

<strong>田島弓子●たじま・ゆみこ</strong><br>1967年生まれ。成蹊大学文学部卒。IT業界専門の展示会主催会社などを経て99年、マイクロソフト日本法人に転職。在籍中、個人、グループでプレジデント・アワードを2度受賞。2007年、キャリア、コミュニケーションの支援を行うブラマンテを設立。
田島弓子●たじま・ゆみこ
1967年生まれ。成蹊大学文学部卒。IT業界専門の展示会主催会社などを経て99年、マイクロソフト日本法人に転職。在籍中、個人、グループでプレジデント・アワードを2度受賞。2007年、キャリア、コミュニケーションの支援を行うブラマンテを設立。

まず売り上げ目標を達成するためにすべきことをすべて書き出す。すると2人でなんとかこなせる仕事量が目の前に現れる。それを1人でやるために知恵を出し、一つ一つ潰していく。

この働き方は3社目のマイクロソフトでも変わらなかった。彼女を目の前の仕事に駆り立てたのはやはり“危機感”だった。

記念受験だったという同社には、自分よりはるかに優秀な社員が山ほどいた。「私、自分に自信が持てなかったんですよ。この人たちについていけるのかなと不安で不安で。でも、そういうときに生きたのは、与えられたことを迷わずにやるということだったんです」

プレゼンのときは問答集をつくって不安をなくす一手間を怠らなかった。終電はたいてい逃すほどの忙しさで、トイレに行くのも忘れ、膀胱炎になったこともあるという。田島さんはこの状態を「ハマる」と呼ぶ。「ハマって、仕事=人生というほどアンバランスに打ち込んだことが、結果に繋がったときのあの感じがたまらないんです」

その積み重ねが認められて、営業部長も務めた。しかし、これはピカピカのキャリアウーマンが、ワーカホリックに働くことをすすめる本ではない。「ハマる」ことは、自信のない1人のサラリーマンが見つけた、〈自分を奮い立たせるための究極のテクニック〉なのだ。「一定の期間、アンバランスな働き方をすることで、仕事が面白くなる。その働き方を提案したいと思って書きました。同時に、企業側もハマることができる魅力的な職場をつくる努力をしてほしいと思っています」

「サラリーマン」「与えられた仕事をやる」……。どこかネガティブな響きのあるこれらの言葉がポジティブな意味で頻出するところに、サラリーマンへの敬意と愛情が感じられる。「サラリーマンはえらいんです。組織、派閥、利害関係のしがらみのなかで、与えられた仕事をするためにクリエーティブな動きをする。根回しも、とても質の高い仕事だと私は思います。もっと自信と誇りを持っていいのではないでしょうか」

田島さんは17年間のサラリーマン生活に終止符を打ち、今は仕事にハマるサラリーマンを生み出すべく、コンサルティングに奔走している。