Q.なぜ深呼吸で血行がよくなるか?

スマホの画面ではなく、紙の本や雑誌がいい

私が講演などでよくお伝えするのが「一十百千万」という言葉です。「一」は一読。スマホなどの画面などではなく、紙の本や雑誌を一日一回は読む。プレジデント誌を読むのもいいわけですね(笑)。

次に「十」は十笑。一日十回、大笑いする。「百」は百吸。百回、深呼吸をする。「千」は千字。文字を千字書く。「万」は万歩。一万歩、歩くということですね。

先ほど、目の老化と体の老化はリンクしているといいましたが、「一十百千万」は全身の健康、ひいては目の健康にも非常に意義のあることなんです。

本を読むことは脳の活性化につながりますし、笑うことはストレス解消になります。ストレスがたまると免疫機能が低下し、体の老化を促進しますから、体にも目にもよくないことなのです。

深呼吸は、交感神経が優位になりやすい現代人をリラックスさせ、副交感神経を活性化させてくれる最もお手軽な手段です。血流を促して血行をよくしてくれるので、もちろん目にも好影響があります。

手で文字を書くことも脳にいいといわれていますし、歩くことは血流もよくしてくれます。さらには認知症予防にも効果があります。

運動をやりすぎるとむしろ老化する

目の老化を予防、あるいは老化の進行を遅らせるために血の巡りをよくすることを考えるなら、やはり「全身」のストレッチをしましょう。特に首と上腕とわきの下の筋肉がほぐれると、首と肩の血の巡りがよくなります。合わせて「第二の心臓」と呼ばれるふくらはぎの筋肉もほぐすと、目への血流が一層スムーズになります。気づいたときに、その場でつま先立ちを繰り返しふくらはぎを上下させる、つま先立ちのまま、10~20歩、歩くのもいいでしょう。ふくらはぎの筋肉が鍛えられるので、血液を押し戻す力が高まります。つま先立ちは座ったままでもできるので、勉強や仕事の休憩時間に、こうした部位へのストレッチを組み込むと、非常に効果的だと思います。

運動が体にいいといっても、やりすぎには注意が必要です。負荷の大きすぎる運動は体にとってはむしろ害で、老化につながりかねません。散歩やジョギング、ストレッチなどの負荷の軽い「スローエクササイズ」が今注目を集めており、先にあげた「一十百千万」のなかの一万歩(歩く)というのは、まさにちょうどいいエクササイズだと思います。

目のエクササイズとしては、「遠くを見る」ことを意識づけるようにしてほしいですね。毛様体筋は近くを見るときは緊張しているので、意識的に遠くを見るようにして、ほぐしてあげてください。

いずれも、道具などは一切必要なく、いつでもどこでもできる簡単なトレーニングです。仕事の合間、お昼休憩など、ちょっとしたときにやるように心がけておくといいと思います。

▼「一十百千万」で目も健康になる!

林田康隆
医療法人康梓会Y'sサイエンスクリニック広尾 理事長・院長(日本眼科学会認定眼科専門医)
大阪大学大学院医学系研究科修了・博士課程修了。眼科医として難治性白内障手術や網膜硝子体手術に取り組む傍ら、眼科の領域にとどまらず、幹細胞療法など再生医療を実施。
 
(監修=林田康隆 構成=衣谷康 撮影=諸田こずえ、川上尚見 写真=PIXTA)
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