従業員満足度向上のための営業時間短縮

店舗のサービス品質を高めたことも好影響を与えただろう。リピーターを確保するには、従業員の好印象や接客力が欠かせない。そのために幸楽苑HDは、まず従業員満足度の向上を目指した。その一環として、夜遅くまで働かなくて済むよう、郊外とフードコート内にある店舗を中心に営業時間の短縮を実施した。大半の店舗を午前0時までの営業としたのだ。こういった「働き方改革」を通じて従業員満足度が高まり、サービス品質も比例して高まった結果、リピーターの確保に成功した面がありそうだ。

営業時間の短縮は深夜の需要を逃してしまうというマイナス面もある。前述の通り、日高屋はそれが客数減につながった。一方、幸楽苑は郊外店やフードコートが大半で、駅前中心の日高屋とは異なり、深夜営業には頼っていない。

日高屋の営業短縮からは「人手不足で仕方なく」という感じを受けるが、幸楽苑は「従業員満足度を高めるため」という積極的な戦略性を感じる。これは立地戦略の違いが影響したといえるだろう。

日高屋は今期が正念場

幸楽苑HDはこうした一連の施策が奏功し、客数増を実現してきた。19年3月期は既に終了しており、決算は後日発表されるが、直近の予想では売上高が前期比5.0%増の405億円、純損益は9億円の黒字(前期は32億円の赤字)を見込んでいる。正確な実績はまだわからないが、いずれにせよ「視界は良好」と言っていいだろう。

一方、ハイデイ日高は今期(2020年2月期)の見込みを、売上高が前期比3.9%増の435億円、純利益は1.1%増の31億円としている。増収増益を見込むが、力強さを欠く。今期は正念場となりそうだ。

佐藤 昌司(さとう・まさし)
店舗経営コンサルタント
立教大学社会学部卒業。12年間大手アパレル会社に従事。現在は株式会社クリエイションコンサルティング代表取締役社長。店舗型ビジネスの専門家として、集客・売上拡大・人材育成のコンサルティング業務を提供している。
(写真=アフロ)
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